07

「っ、大丈夫ですか!」
「それはこっちの台詞です!」
 間髪入れず、マコトが怒鳴り返した。空中でサヤカをかばってくれたマコトとは、着地の時の衝撃でそれなりに離れてしまっていた。それでも耳が痛いほどの声だった。
 雪の中に咲く花々の中で、はなびらをあちらこちらにつけながら会話する様子は大変幻想的だが、いまはそんなことを言っていられる状況じゃなかった。とりあえずは無事らしいマコトに、サヤカは深く安堵する。マコトはまだ納得いかないらしく、半分ひとりごとのようにサヤカにまくしたてた。
「無茶です、あんな……死ぬかもしれなかったんですよ{emj_ip_0792} 見ず知らずの人を助けるために命を懸けるなんてそんな、無茶なこと……」
「見ず知らずなんかじゃないし、助かるって思ったから手を伸ばしたんです{emj_ip_0792}」
「それは嘘ですよね、脊髄反射ですよね」
「うっ……」
 言葉に詰まったサヤカに、マコトが深いため息を吐く。「命は大事にしてください」とありきたりなことばを最後に、二人の間には沈黙が訪れた。簡易化された詠唱の効果が切れ、ゆったりと花が消えていく。体重分沈んだ雪の上に座り込んで、サヤカはなんと答えようか考える。
「……お説教より前に、言うことあるんじゃないですか」
 同じように雪に座り込んでいたマコトが、ふと顔を上げた。ふてくされた子供のようなことしか言えない自分に嫌気がさすけれど、今思いついた言葉がこれだけだったのだから仕方がないといえば仕方がない。指先でつめたい雪を弄んだ。
「助けてくれてありがとうございました」
「……こちらこそ」
 私は何を言っているんだろう。先に相手のことを命を賭して助けたのはマコトのほうであって、自分ではない。これではほんとうに幼い子供のようだ。
 目を合わせないままにそう言ったサヤカに、マコトが少しだけ目を細めた。ああ、空気が重たい。サヤカは自分の発言を後悔した。それでもなんだか、マコトに理不尽なことを言われているような気がしていらだってしまったのだ。そんなサヤカの内心もいざ知らず、マコトは少しだけ柔らかな声で言った。
「僕は当然のことをしたまでですから」
 少しだけ、心にもやがかかったかのように思えた。サヤカはそれでもふんわりと笑って、もういちど「ありがとうございました」と言った。