チッチッチ

〔第四章 決断の時〕

 宿にから大慌てで荷物を引き上げ、半時間後には再び四人が門の前に集まっていた。息も切れぎれに走ってきたマコトとサヤカに、シュリがお礼を言う。
「ほんとうにシュカって名乗ったんだよね、風魔法も光魔法も使えて、幻惑魔法も使ってたんだよね」
「歩きながら話すぞ、シュリ。早く会いたいだろ」
 今にも泣きだしそうな声音に、サヤカとマコトは深くうなずいた。門衛にぺこりとお辞儀をしたのちに、ミコトがシュリの手を引いて、その後ろをついていくようにしてサヤカとマコトが門を潜る。半日もかからずに一昨日泊まった宿に戻れるのはサヤカたちが立証済みなので、体力を温存することなく早く歩いた。どうせ今晩は宿に泊まるのだから、一定の速度で進めばいいだけなのだが、シュリがどうしても堪えきれないようだった。
 出会ったばかりのサヤカでもわかるほど、ミコトはシュリを甘やかしていた。兄弟として長年共に過ごしたマコトならなお気が付いているだろう。あえて何も話さないまま、静かに道を進んでいた。気まずい沈黙ではなかった。
 雪は溶け、街道は少しぬかるんでいた。シュリの靴は布製のブーツに見えたがどうやら耐水性は優れているらしく、足元を気にすることなく歩いていく。ミコトはいつでもシュリを支えられるようにか、ずっと隣に控えていた。
 この中で言えば、おそらく一番体力のないシュリが先頭を切って歩いているため、ほかの三人が付いていけなくなることはない。時刻が夕暮れ時に差し掛かるまで、些細な雑談以外のことを話さずに宿屋のそばまで歩いて来ていた。