絶望サイフォン

 世界が変わってしまった。
 地獄の果てのような真っ赤な空は、血を流したようだ。あれだけ澄んだ川は、三途の川のようにも見える。ひと言で済ますならば、汚い。銃声、爆発音、倒壊。すべてが当たり前になってしまった世の中に、私は佇んでいた。隣には、誰もいない。

 ふつふつと皮膚がめくれ上がりそうなほど、空気は汚れて、息苦しい。人間が道端に倒れているのは、見慣れてしまった。どれも、異様なことだというのに。
 これは他のなにものでもない、「絶望的な状況」といえるだろう。しかし私は、足を動かすのを止めなかった。この絶望的な状況にもかかわらず、私は、何年も会っていない「希望」を心の底で信じていたから。弱くて一度は見捨ててしまった、私にとっての「希望」が、まだ私の中にあったから。

 もしも私にとっての希望が、幻覚でもなく、私の心の奥深くでもなく、私の目の前に現れることがあるならば――私の目からはとめどなく、涙が流れ落ちることになるのだろう。

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