幸福の代償

 私の20回目の誕生日の前日。私は4歳になるスムージー・シトロン・シナモンの三姉妹を連れて、バタータウンを訪れていた。

 つい先日、難航したドレス選び。クラッカー達が選んでくれたドレスは、思った通りママも気に入り、私のお茶会の準備は恙無く終了した。いつもなら、ゲストの迎えの手配等は私がやるのだが、今回は私の誕生日パーティーも兼ねているというもこともあって、ペロスペローとコンポートが分担することになっている。すなわち、私はお茶会当日まで暇になってしまったのだ。

 そこで私は、小さい弟妹達のために時間を割こうと決めた。誕生日が過ぎれば、タイミングを見計らって死ぬ予定なので、弟妹との最期の時間を楽しみたかったのだ。
 日替わりでブリュレ・ブロワイエ以降の兄弟と過ごし、本日は足長族のハーフであるスムージー達三つ子と過ごす日だ。何をしたいかと尋ねたところ、「「「ねえさんのバタータウンにいってみたい!」」」と三人が声を揃えたため、マーガリン島バタータウンを散策することになったのである。

 こんなことでよかったのだろうか、という思いを禁じ得ないが、三姉妹が楽しく笑っているのを見ると、まぁいいかという気にさせられる。子供のパワーとは絶大である。…まぁ多分、相手がペロスペロー達でも私は結局甘えさせるのだろう。彼らはもう子供といえる年齢ではないし、相変わらず恐怖の対象であるとは言え、20年間兄弟として生きてきたのだ。小さい弟妹と接している時のように母性本能が擽られることが少なくても、可愛いと思う瞬間はやはりある。大事に思っているし、戦いで傷ついて欲しくもない。でも、それが私の自殺を引き留める足枷にはならない。それはつまり、私が「前世」の家族を愛していたように、今の家族を愛することができないからだ。…屑を極めた女とは私のこと。
 この20年、何の役にも立たないくせに、“ビッグ・マムの長女”という威光を背負わせてもらい、育ててもらっておいて、そのお返しが“自殺”とは、自分でも屑だなぁと思う。
 でも、言い訳をさせてもらうと、私はどうせ生きていたところでこれから先も何の役にも立たたない存在だ。だから、生きていても死んでいてもどっちでもいいと思うのだ。戦力にもならないし、ママのコレクションでもあるので政略結婚の駒にもならない。子育てを頑張ると言っても、いずれベビーシッター役は不要になる。お菓子作りも、シュトロイゼンの代わりにはなれないし、器用貧乏な私よりも各々何かしらの食材のエキスパートである弟妹がいる方がいいはず。
 それに、そもそも家族が私に向ける愛情だって、私の種族の血によって生み出された、紛い物の感情だ。老若男女問わず惹き付ける魔性が、家族をも狂わせているだけに過ぎない。ヴィーラ族の血を引いていなければ、この美貌を失くしてしまえば、家族は役立たずの私を愛したりしないだろう。そうなれば、ただの穀潰しでしなかい。…まぁ今でもそうなんだけど。そしてママは、ただの穀潰しを生かしておく程優しくない。
 しかし、年がら年中自殺願望を抱いている私も、さすがにママや弟妹には殺されるのは気分的に何か嫌だ。だから、己の手で己の命を終わらせるのだ。生きていても死んでいてもどっちでもいい存在なのだから、迷惑をかけずにひっそりと死のう。元の世界に戻れるかもしれないし、そうでなくてもこの世界・この家族からは自由になれるし。
 そこだけは何年経とうとぶれないのはある意味凄いと思う。屑だけど。
 
 
「カヌレねえさん」

 シナモンの声に、伏せていた目を上げる。「なぁに?」と尋ねると、シナモンは凛々しい眉を寄せた。

「ねえさん、なんだかすごくこわいかおしてるよ?」
「いっぱいあるいたから、つかれちゃった?」

 シトロンからも声をかけられた。スムージーは無言だったが、その顔には私を心配する表情が浮かんでいる。

「大丈夫よ。ちょっと考え事を…でも、大したことじゃないから、大丈夫。ごめんね」
「ほんとうに、だいじょうぶ…?」

 私は安心させるように、笑みを作った。妹に気遣わせるなんて、姉失格だ。

「もちろん。こんなに可愛い妹達と一緒にいるのに、疲れる訳ないじゃない」
そんなことより、次はどこへ行きましょうか。
「三人の行きたいところ、どこでもいいよ」

 三人は顔を見合わせたものの、私の偽りのない笑みを見て、私の言葉を信用してくれたようだ。姉妹を代表して、姉であるスムージーがまた口を開いた。

「わたしたち、ねえさんといっしょに、おようふくをみたい!」
「洋服?……いいけど、どうして急に?」
「あしたねえさんがきるドレス、クラッカーにいさんたちがえらんだんでしょう?」
「そうよ。三人ともとてもセンスがよかったわ」

 上の弟妹よりは私のこと断然よくわかってるチョイスだったから即決だったぜ!

「わたしたちだって、ねえさんににあうドレスをえらびたかったのに、ねんこうじょれつだったって、ブリュレねえさんが」
「……まぁ、あくまでペロスペローの言い分だけどね。コンポートとオペラ達は参加してないし」

 あの後、私はちゃんとコンポートとオペラ達五つ子にお手製のお菓子を送った。六人とも久々の私のお菓子に大喜びしてくれたが、私としては、六人が、あの地獄の「僕・私がカヌレ姉さんに是非着て欲しいドレスお披露目大会」に出場してくれなくて本当に嬉しかった。「ありがとう……っ!」という私の言葉から、おおよその事情を察したコンポートは大量の新鮮なフルーツを、オペラ達五つ子は代表としてオペラが生クリームを送ってくれた。それらを使用して作ったケーキは、ドレス選びに協力してくれたクラッカー達と一緒に食べた。美味しかったし、とても楽しかった。
 後日、一体どこから聞き付けたのか、ハブられた──ハブられた原因は私にとち狂ったドレスを着せようとしたからで、つまり自業自得である──子達が拗ねに拗ねて、機嫌を取るのが大変だったことを除けば、可愛い弟妹の楽しい思い出である。

「ねえさんがきるドレスはえらべなかったから、ねえさんにわたしたちのふくをえらんでほしいの!」
「おねがい、ねえさん!」
「いっちゃくだけでいいから!」
「ん"ん"っ!!」

 あっぶな。心臓止まるかと思った。どうしよう。私の妹が可愛すぎる件について。兄姉に対抗したい嫉妬心も、一着だけでいいからという健気さも、そもそも舌足らずな喋り方も全部全部可愛い。そうまでして私のドレスを選びたがる理由はやっぱりわからんけど、でも可愛い。

「もちろん、選んであげるわ。それにね、シトロン、遠慮しなくてもいいのよ。何着でも、気に入ったのがあれば全部買ってあげる」
「……いいの?」
「子供が遠慮なんかするもんじゃないのよ。もう子供じゃないペロスペロー達だって遠慮しないんだから、正真正銘子供のお前達は遠慮なんかしちゃダメよ」

 ほんと、上の弟達は遠慮というものを覚えろよな…

 以前、ママの許可をもらって、近場の島に行くというカタクリ達と一緒に出掛けて、そこで四人で夕食を食べたことがあるのだが、あの三つ子は私の三倍以上は食べていたくせに、支払い全部私に丸投げしてきたんだよ?「私の奢りよ」なんて一言も言ってないのに。それなのに、満足そうな顔で「美味しかった!」と訴える三人を見て、いつもこうなら可愛いのになぁと思っているうちに、気づけば私の手は勝手に金を払っていた。畜生……!「前世」でブラコンでシスコンだった私は、今生でも骨の髄までそうらしい。
 しかも、食事だけでなく弟達の酒代まで払わされたので──私は一滴も飲んでいない──、財布はすっからかんになってしまった。追い剥ぎに遭った気分。

 そんな弟達に比べれば、三姉妹のお願いは叶えるのも簡単だ。それに、女の子との買い物は楽しいから好き。「前世」でも妹と一緒によくお買い物してたなぁ。懐かしい。

「どんな服がいいの?」

 尋ねると、三人は声を合わせて「「「ねえさんみたいなかわいいふく!」」」と答える。可愛さ攻撃で私を殺す気か?死因、「妹の可愛さ」になるかもしれない。最高だな。

「ふふっ…可愛いこと言ってくれるわね。…なら、私がよく行くお店に連れて行ってあげる」
「やったー!」
「わたし、ねえさんとおなじのがいい!」
「わたしも!」

 はしゃぐ三人を引き連れて、私はお気に入りの店に向かった。

 その道中、彼の店の前を通り掛かった時、店内で接客していた彼と目が合った。彼が柔らかく微笑む。見ているだけで、心が暖かくなって、幸せな気持ちになる。私は妹達に不審がられない程度に笑みを返した。
 


 その日の夜。
 就寝前、私は自分のベッドに腰掛けて、一日中歩き回ったおかげで、棒のようになってしまった足を揉み解していた。浮腫が取れれば、あとはもう眠るだけだ。

 きっと今頃、私同様足のだるさをもて余しているだろう三姉妹は、私が持っている物とよく似たワンピースをそれぞれ三着ずつ手に入れて大満足し、屋敷の姿見から、ブリュレと共に“鏡の世界”を通ってホールケーキ城へと帰って行った。スムージー達が帰ると、私は出掛けていた間に溜まった仕事を片付けにかかった。万国の財政管理をも任されている私には、休みなどないのである。本当は明日以降に回してしまいたかったのだが、どうもママの癇癪──食い患いではなく、普通に機嫌が悪くなっただけ──で壊された物品及びホールケーキ城の床や壁の修理費に関する書類だったので、渋々すぐに取りかかったのだ。

 食い患いも未だに意味がわからんのだけど、何でちょっとムカついたぐらいでお城壊すの?自分の家じゃんよぉ…私の仕事増やさないでよぉ…

 泣く泣く仕事を終えた後は、さっさとお風呂に入り、簡単な食事を済ませ、残りの時間は全て全身のマッサージに使った。浮腫を放置するのはよくないし、明日はドレスに合わせたヒールの高い靴を履かなければならないから、少しでも負担を軽減させたかったのだ。三姉妹との時間はとても楽しかったけれど、その代償もなかなか大きかった。私はまだいいとしても、まだ小さい妹達は私より辛いかもしれない。明日、一言謝っておこうか。

 ふくらはぎをゴリゴリと指で圧していると、部屋の扉がノックされた。ちらりと時計を見て、私は来訪者が誰なのかを把握する。

「どうぞ」
「失礼致します」

 入ってきたのは、昨年から私の屋敷に努めている料理人の一人だ。いつの頃から働いているのかまでは承知していない──屋敷で働く人間の審査は全て家令(ママが直々に与えてくれた)に任せている──。私が彼の存在に気づいたのは、毎朝飲むコーヒーの味がいつもと違っていたからだった。

 私が愛飲しているコーヒー豆は、かつて私が海兵に捕まりかけたあの町のコーヒー専門店のものだ。私がその店の豆を気に入ったことを知った妹は、店主達を殺し、店にあった全ての豆を強奪してきた。それを、これまた妹が気を利かせて、ダイフクに同じ豆を仕入れるように進言したようで、今では私の屋敷には、あの店にあった以上の豆が保管されているのだ。
 だから、私は毎朝その豆で淹れたコーヒーを飲む。私のせい・・・・で殺された人達を忘れないために。

 そんな大切なコーヒーの味の変化に、私は当然気がついた。味が落ちたからではない。いつもよりも美味しかったからだ。誰が淹れてくれたのか、どうやって淹れたのかを料理人達に尋ねたところ、自分が淹れたのだと手を上げたのが彼──18歳の料理人見習い──だった。聞けば、彼の家族がコーヒー好きで、子供の頃から美味しい淹れ方を教わってきたのだという。
 思い入れのあるコーヒー豆を、更に美味しいコーヒーへと変えられる存在を気に入った私は、以降彼にコーヒー豆の管理等を任せた。その後料理人達の采配で、彼は私が飲む物全てを担当するようになったのだ。以降、朝はコーヒー、夜はホットミルクを飲むのが私の日課になっている。

「今日もありがとう。もう休んでいいわよ」
「はい。カヌレ様こそ、今夜は早くお休みください」
「そうするわ。ありがとう。おやすみなさい」

 私は受け取ったマグカップに目を落とした。だが、いつもならすぐに退出する青年は、その場から動こうとしない。もう一度視線を上げれば、青年は徐に小箱を差し出してきた。

「家令から預かって参りました。カヌレ様が書斎で書類仕事をなさっている間に、ジャム屋が訪ねてきて、納品書と共にこれを。「少し早いけれど、カヌレ様に」と…」
「!」

 私が箱を受け取ると、青年は「失礼致します」と一礼して出て行った。それを見送り、私は勝手に跳ねる心を抑えて、そっと小箱を開けた。
 中には、「HAPPY BIRTH DAY」と書かれたカードと一緒に、いくつもの青い小花で彩られたバレッタが入っていた。この色は、きっと私の瞳の色を思って選んでくれたのだろう。そっとつまみ上げる。手鏡を引き寄せて見れば、髪の色ともよく合っていた。


 彼が、私の為に選んでくれた。私の瞳の色を思い、私の髪に似合う色を選んでくれた。
彼が選んだバレッタは、明日私がパーティーで受け取るどのプレゼントよりもシンプルで、金額的にも劣るだろう。でも、こんなにも私の心を高鳴らせるプレゼントは他にない。
 彼は、とても優しい人だ。彼が私に惹かれたのは、私がヴィーラだからかもしれないと思ったのは最初だけで、交際が始まり逢瀬を重ねるうちに、そんなことはどうでもよくなった。彼といる間だけは、全てを忘れられるのだ。愛おしくも恐ろしい家族のことも、自殺のことも何も考えない穏やかな時間は、「前世」で当たり前のように過ごしていた時間を思わせるから、彼の隣は居心地がいい。今では、「前世」の恋人云々関係なく、彼のことを好いていた。

 無論、いずれ精算しなければならないとわかっている。例え私が自殺を思い止まったとしても、この万国から出て行かない限り、私達は一緒にはなれない。そして、それは不可能だ。家族は私を離さないし、一度万国へ足を踏み入れてしまった彼も、ここからは出られない。決して結ばれることのない私達は、一生ママの檻の中で飼い殺しだ。
 だけど、彼は違う。相手が私でなければ、彼は自由に恋をして、結婚して、子供を持つことができる。檻の中ではあっても、比較的まともな人生を送ることができるのだ。

 だから、私は手を離さなければならない。彼を自由にしなければ。家族に気づかれる前に。

 あの雨の日に、彼の想いを受け入れてしまった時から、ずっと先延ばしにしてきたことだ。彼と過ごす時間が、私が求めてきた穏やかさに溢れていたから自分の感情を優先してしまっていたけれど。彼を大事に思うなら、直ぐにでも離れないと──。


 貰ったバレッタを握り締める。自分がこんな、悲劇のヒロインのような感情を抱くことになるとは思いもよらなかった。その悲劇は、自分の愚かさが招いたというのに。死にたがりの屑のくせに、人並みに恋をするなんて、そもそもが間違っていたのだ。何がしたいのか、自分でもよくわからない。全く、自分で自分が嫌になる。

 残っていたホットミルクを飲み干して、私はバレッタを小箱へ戻した。もうそろそろ寝ないと、明日の朝が辛いだろう。そう、明かりを消そうと手を伸ばした時。遠くで微かに爆発音が聞こえた。

 驚いて、伸ばしかけた手を引っ込める。その拍子にマグカップを床に落としてしまい、破片が辺りに飛び散る。しかし、私はそれに構わず窓辺に駆け寄った。どうしてか、嫌な予感がしたのだ。

「……!」

 窓の外には、私の納める町が広がっている。その一角が、赤く塗り潰されている。火事だ。…彼の店兼住宅のある方角から。

 それに気がついた瞬間、私は駆け出していた。部屋を飛び出して廊下を走り抜け、声をかけてくる使用人達を全て無視し、屋敷から転がり出た。ネグリジェの裾が翻るのも気にならず、ただ一心に真夜中の町を駆ける。爆発音に目覚めた住人達が、家の窓や扉から顔を出したり、通りに出ては火の手が上がっている方を不安そうに見ている間をすり抜けた。「カヌレ様!?」という声に答える余裕などあるはずもなく、途中何度も躓いたり、ぶつかったりしながら、私は彼のことだけを考えていた。


 ……違う、絶対に違う。方角的には彼の店がある方だけど、きっと違う。彼の店じゃない。だって、…だって、彼は今日もいつも通りお店にいて、私に微笑んでくれたもの。私が大好きな笑みを浮かべて…それに、忙しくて会えなかったけれど、私のためにプレゼントまで持ってきてくれて、…それで……


 ぐるぐると回っていた思考回路は、目的地に近づくにつれて動きを止めた。私は肩で息をしたまま、呆然と立ち尽くす。

 ──彼の店が燃えている。轟々と逆巻く炎が、彼が大切にしていた店を呑み込んで。恐怖に駆られた泣き声、姿の見えない彼を案ずる声、消火活動を呼び掛ける声。そのどれもが、私を通り抜けていく。私は目を見開いて、一言の声を発することもできずに、ただそこで突っ立っているだけだ。

 どうして、彼の店が燃えている……?
 どうして、彼の姿がない……?

 何事も完璧に行う彼が、火の始末を怠るはずがない。この辺りで、不審火が相次いでいるという話も聞いていない。そもそも、マーガリン島の建築物に使われているバターはよく燃えるから、火の取り扱いは特に注意することが義務付けられているのだ。だから、こんなことは起こり得るはずがない。なのに、どうして。 


 その時、不意に風向きが変わった。煽られた火が、隣の店舗をも焼き尽くす。火の粉が降ってきた。熱風が私を直撃する。そして、私は気づいてしまったのだ。

 熱と、バターやジャムの焼ける匂いを運んできた風に紛れる、微かな匂い。これまで何度となく嗅いだことがある。…あぁ、間違いない。これは、キャンディの匂いだ。弟が操る魔法。捕らえた者を決して逃がさない、甘い甘いキャンディの…──

「あ、ああ…ああああ……」

 開いた口から出てきたのは、言葉にもならないただの音。立っていられなくなって、その場に崩れ落ちる。体に力が入らない。腰が抜けてしまったように、立つことができない。近くにいた住民が、私の存在に気づいて、何かを叫びながら近づいてくる。その声は、店が倒壊する音に紛れて聞こえなかった。



 全部、私のせいだ。いずれこうなると、わかっていたはずなのに。なぜ、彼の優しさに甘えてしまったのだろう。なぜ、ほんの一時でも、自由になろうとしてしまったのだろう。
 私が早く手を離していれば。そもそも彼の手を取っていなければ、こんなことにはならなかったのに。私のせいだ。私が現実から目を背け、逃げ場所を求めたから。そんなもの、この世界のどこにも存在しないのに。死ぬこと以外に、ここから逃げる術などなかったのに。

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