07月



気がついたら家のベッドで寝転がっていた。
覚えがなくとか記憶がなく、とかそういう所謂不純な意味ではなく、仁部さんとのご飯の後から記憶がすっぽ抜けている。それくらい彼との時間はあっと言う間だったのだろう。
天井から頭を右に動かせば、全身鏡に映る私が独り。地毛の色が頭部やや下に侵食してきている。
後ろの年中締めっぱなしのカーテンからは西日が部屋に漏れ刺さり、8畳弱の部屋を橙色に染めていた。夏が始まる予感がする。

結局謎のお茶会以降、仁部さんとはお互いに誘い合って1週間に1度は会っている。
映画に行けば好みが違う、趣味は正反対で一切の共通点はなし。本当に4月の一件がなければ一生出会わなかったであろう人間に、どうしてそこまで固執するのか不思議だ。仁部さんも、私も。
昔好きだった人に似ているからとか、そういう最低でも理解できる範囲の理由ならよいのだが、今回の感覚については本当に「なんとなく」で、自分で自分の気持ちが解らなくてたちが悪い。彼のペースに乗せられているような気がしてならない。
友人とも知り合いとも言えないこの微妙な距離感に苛立ちすら覚えることがある。好きという感覚を忘れて久しいが、これが仮に恋だというならば、世の中はもうちょっと簡単に出来ているのかもしれない。

窓の外から聞こえてくる祭囃子で現実に戻される。そういえば会社近辺の花火大会も来週に迫っていた。

そうだ、花火大会。
吸い込まれるようにスマホを操った。
いつの間にか交換していたLINEで、仁部さんへのトーク画面に打ち込んだ文章を何度も何度も推敲をする。
エンターをタップした後の私は不気味なほどに笑顔で、鏡に映った自分から目を逸らすように枕へ頭を埋めた。新しくした柔軟剤の香りがする。

こんなに考えていても、彼が私のことをどう思っているのか分からない。絶対天然ジゴロってやつである。なあなあに乗せられている私も多分、踏み出さないで終わる。
けじめをつけない関係で終わりにしようと、心の何処かで考えていた。
花火大会までで、終わりにしよう。
溢れる気持ちに膝を抱えた。



  

top