童話 美女と野獣
いつも自室で食事をとっていたのだが、晃に誘われて一緒に食事をとることにした。
アヴドゥルに感激された時は少し煩かったが、久しぶりに食事を美味しいと感じた。
その後も、屋敷の中を案内し、自身のコレクションを見せると晃はとても喜んでくれた。
『すごい、水族館みたいっ!!』
承太郎「欲しいものがあったらどれでもくれてやる。何がいい、真珠か?サンゴか?」
世界中の海を模した水槽には、それこそ世界中の宝石やサンゴも飾られている。
晃はいったいこの中でならば何が好きなのだろうか、今度仕入れる時はそれを中心に持ってこさせ・・・。
それまで、晃は俺のそばにはいないか・・・。
『え?えっと、じゃあまたここに来てもいい?』
承太郎「・・・ここに、また来てくれるのか?俺に会いに・・・」
晃は、この部屋のどの宝石よりも俺に会いに来る事を選んでくれた。
次に会える時はいつになるかわからないし、本当に来るのかもわからない、ただの口約束のはずなのに、どの魚や宝石手に入れた時よりも胸が高鳴った。
『お邪魔じゃなければ?きっと他の人も喜
承太郎「他のやつは呼ぶなっ!!」
晃の肩をつかんで壁に押し付ける、痛みに顔をゆがめる晃にハッとなってすぐに距離を取る。
本人に悪気はないのだろうが、この姿を見て普通に接してくれる相手など今まで誰一人もおらず、これからももう現れないと断言できる。
承太郎「す・・・すまない」
『う、ううん。僕こそごめん、忘れてたけど、たしか他人と話すのは嫌いなんだよね・・・。
なんで、僕はいいの?』
承太郎「晃は・・・。いや、何でだろうな・・・」
『じょうたろ、んぅ!?』
乱暴に抱き寄せて俺の胸に顔を押しつけてしまったのに、俺に申し訳なさそうに俺を覗いてくる晃の顔に、思わず自分の口を付けるも、獣の口では毛が邪魔で感覚もわからず、ただ当てるだけで、思うようにできなかった。
晃も、男が襲ってきているというのになんともない顔をしていて、まるで犬がじゃれついているだけだとでも思っているのだろう、くすぐったいと笑っている。
なんだ、簡単な事だった、怯えていないのは、俺を「人間」として見ていないだけじゃないか。
承太郎「帰れ・・・」
『承太郎?』
承太郎「かえれっ!!」
『っ(ビクッ)』
怒鳴った時に牙を見せれば、屋敷に来てから初めて晃は怯えた顔を見せた。
最初からこの反応を見せていてくれていたのなら、淡い期待などしなくて済んだのだろうか。
次の日まで俺は自分の部屋に閉じこもり、あの後一度も会わないままアヴドゥルに言って晃を家に送り返した。
きっと、もう二度と会う事は無いだろうし、もう二度と、この呪いが解かれる日は無くなったのだろう・・・。