晃を追い出して何日か過ぎた。今ではもう食事もおろか、あの水槽の部屋にさえ行く気が起きなかった。
どこにいても晃の事が頭から離れない。唯一残ったのは、あの日晃が着ていた服だけだ。
庭に出て、薔薇の中に倒れ込む。目がかすむ。水も喉を取らない。
白薔薇の匂いは、あの時の花売りのあいつの匂いと同じだから、きと俺はここを死に場所に選んだんだろう。


『承太郎っ!』

承太郎「晃っ」


晃の服を握りしめていると、その本人が薔薇をかき分けて俺を見つけ出した。
傷だらけに血濡れた手で俺の服をつかみ引っ張るが、この体をその細腕で運ぶ事は出来ない。
が、俺は他の腕と見慣れた触手に引きずりだされた。後ろにはアヴドゥルと花京院がいて、引きずり出せたのはこいつらの力だろう。
こいつらがここまで晃を招き入れたのだろう。余計な事を・・・。


『あの、僕謝りたくてっ。ごめんなさ
承太郎「何故戻ってきたっ!!」

『承太郎・・・君の事が忘れられなかったんだ。ずっと、ずっと君は一人で苦しんでいたんだろ?
君は本当は優しいのに、その容姿のせいで外に出る事が出来なかったんだよね?
気にしていたって気付かなくて・・・嫌な事言ってごめんね?』

承太郎「お前・・・本当にこの姿になんとも思っていないのか?
お前とは違って、俺はこんなにも醜いんだぜ?」

『なんとも?そりゃ、最初はちょっと驚いたけど、承太郎はとっても優しいって知っているし、他の人と何も変わらない、僕と同じでしょ?』

承太郎「人間・・・おなじ・・・だと」

『無理に外に行こうとは言わないけど、代わりに僕がこの屋敷にいるからっ!
これからは一人にさせない!一緒に暮らそう!』

承太郎「っ・・・!!!」
『Σ承太郎!?』


晃が俺の手を握りながら言ったその言葉と共に俺の体は、いや、屋敷中が光に包まれた。
光に目が慣れた時には、晃に握られている手は人間の手に戻っていた。


承太郎「これは・・・戻ったのかっ!!」

『Σひぃっすいませんっ!!』

承太郎「おい、なぜ謝る。何怖がっているんだお前は」

『あわわわわ!?ど、どちら様で!?承太郎は!?承太郎はどこ!?』

承太郎「おい、俺が承太郎だっ!」

『Σ嘘だあ!』

承太郎「嘘じゃねぇ!!
『Σひいっ』
お前、野獣の時は怖がらないくせになんで人に戻ったらそんなにビビるんだ」

『や、だって怒ってる承太郎?怖いし・・・』

承太郎「っ・・・はぁ。悪かった」

『ううん、よかった、本当に承太郎だっ』

承太郎「晃っ」


人間に戻った腕で、爪が刺さる事を恐れる事も無く晃を抱きしめる事ができ、
やっと、その唇に、自身の唇を重ねることができた。


花京院「堪能してるとこ悪いが、僕らの事忘れてないか」

アヴドゥル「まぁ、やっと思いが実ったのだそっとしておいて
承太郎「人間に戻った事だし、さっそく俺の部屋に行こうか晃。
この姿ならてめぇを食うと言っても誤解されずに済みそうだしな」

アヴドゥル「Σそっとしておけん待て承太郎!!」
花京院「誤解も何もその発言自体聞き逃せない!!」



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