『花京院、この城を出よう』

花京院「・・・え?」


朝食を食べて、その後書庫へと言ったはずの晃が、その細腕には似つかわしくない大きな斧を持って、お昼の準備をして食器を並べている僕の元に来た。
いつもと変わらない昼下がりに、その言葉はあまりにも衝撃的すぎた。
君は、きっと探検と称して僕に気付かれないようにこの城の中を散策して、武器を探して外に出る方法を考えて、ずっと前から準備していたのかその目には覚悟が宿っていた。


花京院「な、何言ってっ!茨がこの城を取り囲んでいるんだ!茨に触れて、君が無事な保証ができないっ!
もう少し、きっともう少しなんだ!もう少しで晃を助けてくれる勇者が、王子様がっ」

『いつもいつもいつもいつもっ!!君はそればっかりだ!!』


晃が起こったように僕の腕をつかんだ、その腕を引っ張って、晃は大広間の、外に繋がる大きな扉の前に出た。
助けが来る事を信じていないのか、それとももう我慢できないのか、彼は凄く怒っていた。


花京院「ごめん晃、僕もっと頑張るからっ!だから、待って!
君だけなら助かるかもしれないんだ!勇者さえくればその人と一緒なら茨も、君だけならっ」

『僕だけが助かったって意味ないだろ!!!君が一緒じゃなきゃ意味ないだろ!!
何で僕だけ助かるって言うんだ!!君だって本当は外の世界に行きたいんだろ!!!』


そういって、晃は扉に向かって大きな斧を振り下ろした。


『僕がその茨をたたき切ってやる!!だから君も一緒に外に出よう!!!』

花京院「晃っ・・・お願いだから・・・」


何度も何度もその扉に振り下ろす斧で、僕の茨も切るのだろう。
どうしよう、僕はどうなってもいい、でもあの茨に触れた晃に自動で攻撃しない保証が自分自身出来ないッ。
僕だって君と一緒に外に行きたかった、でもダメなんだ、出来ないんだ、だからせめて君と幸せなひと時を少しでも過ごして満足しようとしたのにっ。
それでも、ずっと一緒に暮らしてた大人しい彼が、こんな行動までするほど、僕のせいで・・・。
僕が外に出たいなんて思ったからっ・・・。

僕はその場で膝をついて、段々と開いて光が差す扉と手から血が出ながらも斧を振り下ろす晃の姿を見たくなくて硬く目をつぶった。
自分の耳をふさいで、木片が割れる音と、斧が空を切る音を遮断した。
君の体が千切れる光景を見てしまったら、君の声が悲鳴に変わってしまったら、きっと僕は正気でいられなくなるっ。


花京院「(僕のせいだ僕のせいだ、僕さえいなければ晃が壊れることもなかったし、晃が茨に殺される事もない。
もしかしたら君に相応しい相手すらも僕のこの手で・・・茨で絞め殺してしまったのかもしれない。
僕さえいなければッ)」

『花京院っ!!』

花京院「Σっ!!」


晃の声に体が震える。見たくない見たくないお願いだからっ


『茨なんて・・・どこにもないよ?』


晃の声に顔をあげる。
陽の光を浴びた晃の姿に目がくらみ、腕で影を作る。
目が光になれて、晃の向こう側を見ると、茨はあとかたもなくなって、ひびわれた城の石板のみが、その存在がいたことを証明していた。


花京院「なんっ、なんでっ、だが僕はっ、ここに存在してっ」

『花京院?』

花京院「だって、僕が生まれた時、君の救世主が現れる時に君が目覚めて、茨が消えて・・・。
だから僕は君の救世主が現れるとともに・・・消えるべき存在なんだっそのはずなのにっ」

『僕の救世主は、君なんだよ』


晃が僕の背中から腰に抱きついてそういった。
振り向きたかったけど、力強く抱きしめる君の腕が震えていたのに気付いた。
君も怖かったんだ、この城から出る事が。


花京院「なん・・・で」

『ずっと、天窓見てたでしょ?その時辛そうな顔をしてた。
外に行きたくないって言う時だけ、君は僕の目を見ないから。
僕のせいで君が城にいなくちゃいけないなら、僕が茨を壊すか、僕が死んでしまえば君は自由にっ』

花京院「君がいない世界なんで嫌だ!そんな世界意味がないっ、僕は、君がいるだけでこの城の中で満足できたのにっ」

『僕だって、君がいない世界で外に出るなんて嫌だ!!だけど、君が望まない世界にとじこめておくぐらいなら死んだ方がましだ!!』

花京院「っ!!君はっ、なんて・・・馬鹿なんだ・・・」


君にふさわしい相手が、君を助けに来てくれるって言うのに。
そうすれば、こんなむちゃしなくたって外に出れたかもしれないのに。


花京院「こんな、僕みたいな脇役に・・・君のような子が命をかける必要はないんだよ」

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