『っ・・・』


母の看病をしている間に眠ってしまったようで、ふと起きた時に何かに手を握られているような気がして自分の右手を見る。
開いて閉じて、またひらいて、何か持っていたわけでもないし、もしかしたら母が握っていたのかと思ったが、綺麗に布団の中で眠っている。


『・・・気のせいか』


母は、祖父が言うにはスタンドと言うモノのせいで高熱を出しているらしい。
承太郎の事件ですぐに駆けつけてくれた祖父は、外国人の友人を連れており、その人が言うにはそれが原因で死ぬ人もいるらしい。
承太郎は悪霊だと言っていたが、スタンドというもので、スタンド使いには見えると言っていたのに、母には見えていたから。
俺は・・・結局見えなかった。承太郎の様子を見に行った時も、彼の言葉を理解できなかった。
思えば、承太郎が牢屋から出てこなかったのは、この俺のせいかもしれない。

途中で参加した承太郎の友人を連れて祖父と外国人との4人で、母が苦しんでいる因縁に決着をつけに行くと言って出て行った。

スタンド使いどころか背恰好も一般高校生で、祖父のように知恵が働くわけでもなければ、承太郎のように運動神経がいいわけでも筋力があるわけでもない俺は、当然のごとくこの家に残った。
この家に残って、母の看病をしていた。
いや、きっとこれも気休め程度でしかないのだろう。SW財団という組織の医師達による、最先端の医療器具に囲まれて眠っている母に、濡れたタオルでながれ出る汗を拭いとるという古典的な事しかできない。

本当は、ついていきたかった。俺も、何か役に立つんじゃないかって、連れてってくれって言いたかった。
だけど、祖父は俺に「ここに残ってホリィの看病をしてほしい」と言った。

俺の看病なんて、何の意味もないことが解っていて、祖父はそう言った。


昔から、俺と承太郎は双子としてよく比較された。
似ているのは髪の色ぐらいで、俺は目も黒いし肌の色も普通で、背が高いわけでも頭がいいわけでも顔がいいわけでもなかった。
承太郎は、小さい頃は一緒だった背も日に日に大きくたくましくなり、目は父に似てりりしく色は母に似てきれいな海のような色だった。
頭もよく、運動もでき、皆にも優しく、いつも誰かの中心にいた。
最近は・・・あれだが、優しいのは変わっていないから、周りには必ず誰かが集まる。

まぁ、俺も普通に友達はいるし、学校の成績も頑張ればいい点が取れるから、不満を感じることはない。
けど、双子と言えば驚かれるし、俺が兄だと言えばまるで可哀想なできそこないを見るような目を向けられる。

その事に関してむかし二人の前でヤツあたりのようにぶち切れたこともあるが、それでも二人はこんな俺を愛してくれた。
だから、もう最近では承太郎に劣っていようが、母にも父にも似ていなかろうがどうでもよかった。


だから、こんな感情は初めてだった。


俺は

俺には

なんでスタンドが見えないんだ。

なんで承太郎にだけっ・・・


何度のその考えが頭から離れなくて、財団の人に少し休んだ方がいいと言われて、自室へと戻ることにした。
ベッドに横になり、目を伏せて未だ誰かに握られていた感覚が残る右手を天井に伸ばす。


『なんでだろう・・・なんでか「また」助ける事が出来ないって・・・
俺はいったい・・・誰を助けられなかったんだろう』


ベッドが揺れると共に、あげていた右手が何者かの手によって掴まれ、俺は落ちかけていた意識を覚醒させた。

開けた目には、見上げた先には、見た事のない金髪の美しい男が、俺のことを兄さんと呼んで、嬉しそうな、悲しそうな、慈しむような・・・でも人間とは思えないほど鋭い眼差しで俺を見下ろしていた。


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