―*―



後ろで晃君とディオが仲良く話しているのを聞きながら辺りを見回す。


なんだろう、何かがおかしい…先程から感じていた言い知れぬ違和感に思わず首を捻れば、頭に衝撃が走る。その衝撃に押されるように身体が地面に叩き付けられる。一瞬遅れて意識と息が止まりかける。


「兄さん!!」


ディオの悲痛な叫び声が聞こえる。視線だけを上に向ければ下卑た笑みを浮かべ晃君とディオを捉えている男達が映る。あぁ、違和感の正体はこれか…人攫いに着けられていたのか…しくじってしまったなぁ…「売れば金になる」「傷物にするな」「早くしろ」「人が来るわけ無い」「少しくらい楽しみたい」「悪趣味が」思考している頭の上を下衆な会話が走る。嫌悪感に眉を寄せれば、ぐいっと前髪を掴まれる。


「大丈夫でちゅかー?」


「おいおい、そいつも高く売れんだから傷物にすんなよー?」


「わーてるって」


ゲラゲラと馬鹿にしたように笑う声が痛む頭に響く。視線を動かせば泣きそうな顔のディオが、視界に映る。晃君も不安そうな表情を浮かべている。


「さぁ、楽しませてくれよ?」


男の手が服に伸びる。あぁディオそんな泣きそうな顔をしないでおくれ?大丈夫だから。胸中でそうディオに告げてから足を思いっきり上に振り上げる。抵抗を予期していなかったのか、あっさりと男の手から逃れられる。


そのままバク転の要領で一回転をしてから、駆け出す。うしろから聞こえる汚い声を無視し目当ての物を掴みディオを捕まえていた男の足を横に薙ぎ払う。


「ぎゃあ?!」


「こいつ!?」


盛大にコケた男を無視して、そのまま晃君を捕らえている男の顔目掛けてそれを突き出す。


鼻から血を出しバランスを崩し倒れ込む男を無視して晃君とディオを背後に隠し先程拾った物―シャベルを構え直す。男を全部で5人。倒せない相手ではない。しかも相手は既に私に手を挙げている。勿論今からやるこの行為は正当防衛だ。まぁ多少過剰防衛になるかもしれないが、


「すこし、目を瞑っていてね。


すぐに済ませるから」


怒気を膨らませる彼らにディオと晃君が目を閉じたのを見届けてから冷えた笑みを浮かべ駆け出す。怒ってるのは彼らだけじゃあない。大切な弟に手を出されかけて、黙ってられるほど私は存外大人じゃあない…


冷えた笑のまま私は上段から振り下ろすようにしてシャベルを地面に叩きつけた。



―*―
前へ | 次へ 4/6ページ

総合ページ 77/95ページ

[戻る] [HOME]