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見慣れた部屋に見慣れない黒髪の少年と共に残されたディオは酷く不機嫌だった。今日は自身の誕生日で、小煩い父親がいないのになぜこんな素性も解らない奴と共に過ごさねばならないのか。ふらりと姿を消してしまった兄に一抹の不満を抱えるが、今日と言う日のために無理を言って休みをとってくれたことを思うと強くは言えない。なぜ、自分は兄と同じ年ではないのか…兄に買ってもらったマフラーがしまってる紙袋がぐしゃりと音を立てて歪んだ。その音にはっとなり、一先ず紙袋を机の上に置く。以前居心地の悪い空気は流れたままである。


「A,ano…」


兄の帰宅をまだかまだかと思いながら視線をドアに投げていれば、聞きなれない言語がディオの鼓膜を揺らた。ディオがちらりと視線を向ければ困った様に眉を垂らす黒髪の少年が目に映る。


「なんだ…」


「E-to…あなたの、名前はでお?」


たどたどしい英語でそう尋ねられ、ディオは眉を寄せる。自身の名前の発音も気になるが何よりも、自身に向けるその視線が気にかかる。親しい者に向ける優しげな視線の中にある微かな戸惑い。あった事も無いはずの少年なのに感じる既視感。ディオは小さく舌打ちをしてからゆっくりと言葉を発する。


「いいか、一度しか言わないからよく聞けよ?僕の名前はディオだ!「でお」でも「でいお」でもない!!発音できないのならその回らない舌で僕の名前を呼ぶんじゃあないぞ?!」


「でお!!」


「っ!だからっ!!」


「お兄ちゃん!」


「っ!」


ぱあっと表情を明るくして巫山戯た発音をするこの黒髪の少年を一発殴ってやろうと拳を固め振り上げようとした瞬間、何を思ったのか黒髪の少年があろう事か、僕のことをお、お兄ちゃんと呼んだ。


「なっ、なっ!」


「お兄ちゃん…?」


顔が熱くなり、思わず後ずさる様に距離を取れば黒髪の少年は小首を傾げ距離を詰めてくる。なんで詰めてくるんだ!!


「な、何なんだ!お前!!」


「?僕は晃、だよ?」


「な、名前を聞いてるんじゃあない!!ぼ、僕がお前の兄だって?冗談じゃあないぞ!!」


「お兄ちゃん、違う?」


「ぐっ…」


警戒すべき相手だと言うことは解っているのだが、あまりにも無防備に首を傾げ問いかけてくるので思わず気を許しそうになる。


「ぼ、ぼくはお前なんか認めないぞー!!」


その場から逃げ出すように寝室に駆け込み頭から布団を被った。



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