―*―



名前は思った。貧民街に置いて彼―晃ような目をした人は一体どれくらいいるだろうか?自身の幼い頃の目は彼のようだっただろうか?家族のため、それを理由に色々な事をしてきた。それこそ前世では考えられない様なこともしたりした。


真っ白で何にも染まっていない彼に私などが触れていいのだろうかと今更ながらに、少し迷いながら晃君の柔らかい手を取り寝室に繋がるドアを開けば、薄い毛布を頭から被り一人ぶつぶつと呟いてから頭を振り乱しているディオが視界に映る。先程までの後ろめたい思考が一気に吹き飛ぶ。…一体何をしているんだろうか?お兄ちゃんには解らないよ…


きしりと微かに床が軋んだ音を目敏く聞き付けたディオが慌ててこちらを振り向き名前と晃視界に入れた瞬間ぽかんとしてから、ゆっくりと口を開く。


「に、にいさん、今の、」


「…」


続く言葉は音になることは無かったが、名前と晃からの少し可哀想なモノを見る目で全てを察したのか、涙目になりながら耳まで赤くする。


「う、うわぁん!にいさんのばか!!アホ!!まぬけ!!すかたん!!」


赤い顔を硬いベッドに埋め罵倒するディオの頭を名前は優しく撫でる。


「大丈夫じゃよ、ディオ。私は何も見てないよ。」


「…うそだ…」


「嘘なんかじゃないさ、ね、晃君?」


「うん、見てない!」


ちらりと布団から顔を出し晃と名前を見やる。


「うそ、じゃないな?うそだったらにいさんのこと嫌いになる…」


ぐすぐすと鼻を啜りながら服の裾を掴むディオの頭をもう一度撫でてから晃手招きする。あまり長く起きていて父親に見つかっても面倒事にしかならないのは日を見るより明らかなので早めと言えば早めだが、もう眠る事にする。


「端っこは流石に落ちてしまうね…うーん、ディオと私の間が一番あったかいし、安全なんだけど…


ディオ…」


「…やだ。」


ぷいっと顔をそらすディオに思わず晃君と顔を合わせる。


「ディオ、晃君よりお兄ちゃんなんだから今日は我慢しなさい?ね?」


「(僕の方が名前さんとこっちのディオ兄さんより歳上なんだけどな)」




何か言いたそうな顔をする晃君に首を傾げながら、スペースを作ろうとするがスペースを作っても服をきつく掴み隙間を埋めるディオに不安げな視線を送れば名前しれっと上着を脱ぎそのままディオに被せる。


「さぁ!」


できた隙間をディオが侵略しないように腕でガードしながらポンポンと布団を叩く名前。


「お、お邪魔します。」


そろりと布団の中に入ってくる晃君と、少し頬を膨らませているディオに苦笑しながら二人に布団を被せる。三人で寝るのは少し狭い様に感じたが、寒い夜には丁度良い暖かさに瞼が重くなるのを感じた。


「二人とも、おやすみ。」


ゆっくりと沈んでいく意識の中その言葉を口に載せ、私の意識は闇の中に沈んだ。



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