とりあえず、助けられたことには変わりない・・・のか。
何故この猫が俺を助けたのか、何故この町の猫を従えていたのかはわからないが。

何者かもわからない猫に惹かれ、そのまま連れ帰ることにした。

家に帰り、父親がいない事を確認すると、すぐにベッドへと猫を置き、手当てをする。
正直、人の傷を手当てすること等母親以外なかったため、どうすればいいのかわからず、
とりあえずはこの痛々しい足をどうにかしようと一気にガラスを引き抜く。


『Σっーーーー!!!』

少年「我慢できたのか。えらいな」


暴れて、引掻かれることも覚悟していたが、この子ネコはおとなしく俺に従っていた。
まぁ、いくら可愛かろうが、暴れて引っかかれでもしたらそのままこの窓から落とすつもりではいた。

なぜか頑張っているその姿が嬉しくて、自然とその小さな頭に手を伸ばすも、動物を蹴る事はあっても撫でることなんて初めてなので極力優しく手を置いてみた。
さらにその手にすりよってくる猫に自分でも笑みがこぼれるのがわかった。
自分の食事を少し分けてみると、子ネコもそれを食べた。
思えば誰かに自分の食糧を分け与えるなどという母さんのような愚かな行為をするのは初めてではないだろうか。
まぁ俺の場合は無償ではなく、少なくともこの謎の猫を観察するためなのだが。
手から食べる姿はやはり弱弱しく、ただ手を煩わせるこの猫の為の行為に対し、母さんに感じるような苛立ちはなかった。
正直猫が何を食うのかは知らんが、少しの量で満足したのか、あとは請求することも無く大人しく膝の上にいる。


少年「それにしても不思議だなお前は。いったいどこから来たんだ。飼い主はいるのか?」

『ミュー?ミィーミィーミィー』


独り言として話しかけていると、何やら一生懸命に鳴いている。
なんだ、いまごろ飯を請求か?それとも遊びたいのか?それとも・・・


少年「フフフ、返事をしているのか?」

『ミュウ(おう!)』


「まさか」とすらも思っていない。なんて事はなく口にした言葉に、この猫はうなずいた。
そう、うつむいたのでも、伏せをしたのでも、下の何かに反応したのでもない。
確かに俺の目を見ていた左右違う色の瞳がうなずいた後すぐに俺の目に戻ってきた。


少年「まさかお前・・・本当に俺の言葉がわかるのか?」

『ミュー』


こんどは真意を確かめるために本気で問いかけてみた。
答えは「YES」見間違いや、気のせいでは済まされない動きに確信に近づく。


少年「ほぉ・・・ならば話すことは出来るか?」

『ミャウゥ』


今度は首を横に振った。


少年「だろうな、さきほどからその愛らしい鳴き声しか聞いていない」

『Σミャウ(あいっ!?///)』


どうやら、うなずけば「YES」横に振れば「NO」というのは、猫でも共通らしい。
(おそらくこの猫だけだろうが)
話が通じるという事実に、気味が悪いながらも、何処かこの猫ならと信じてしまう自分がいる。
そして喜んでいる自分がいる。
自然に出ている相手をほめる言葉が、気を使わなくていいはずの猫相手に出てしまっていることも自分自身気付いていない。


少年「なんだ、照れたのか?フフフ本当にお前は人間のような奴だな」

『にゅぅ』


耳を垂れて、目を潤ませる姿はどこか顔を赤くしているようにも見えた。
反応が一々人間のようだが、そこに計算された感じもなければ、嫌悪感も無い。
昔聞いた猫が撫でられると嬉しいところを思い出し、
たしかここらへんだと、ぎこちなくも撫でてやればゴロゴロとすぐに反応し、つい笑ってしまう。

こんなにも些細なことで笑ったのは初めてなんじゃないだろうかと思えるほど、今の時間は今までにないほどゆったりとしていた。

が、それは一人の男によって打ち切られた。
嫌でも聞きなれてしまった酒の瓶を投げる音とそれが割れる音、
そして俺と母を呼ぶ声怒鳴り声が聞こえた。


少年「チッ(帰ってこなければいいものを、今日に限って。何の用だあのクソが!)」

『??;』


子ネコが一瞬びくつくと、不思議そうに俺の顔をのぞいてくる。
どうやら外の物音より俺の方が心配らしい。・・・わからない。
何故ここまで俺を。


少年「お前は大人しくここにいろ、いいな」

『ミ、ミュウ』


不安げに見つめてくる猫をベットの上にそっと下ろすと、
俺はさっさと要件をすまそうと音のする方へと足を進めた。
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