決断
それから6年 ダニーが 死んだ。
寿命をまっとうしたダニーは、僕らに看取られてゆっくりと意識を手放していった。
晃は僕と一緒にダニーを抱きしめて、ずっとずっと話しかけながら泣いていた。
それは本当に最後の会話をしているようで、晃も僕のようにダニーを家族だと思ってくれていたんだと思うと、僕も我慢していた涙が止まる事はなかった。
僕は19歳。ディオは20歳。晃が17歳。
この間にディオと晃が正式な養子になり、この年月は僕らを心から本当の兄弟にするのに十分な時間だった。
そして晃の決断の時でもあった。
研究から帰ってきた先生が、晃をぜひ連れて行きたいと申し出た。
晃は最初から一歳上の学年(本当の歳はわからないが)、僕らの一つ下の学年から入学して、更にこの歳ですでに生物学の研究を手伝っている。
最初は先生と一緒に、唯一一緒に診察し、僕の家の家畜やダニーの様子を見ていた。
それが評価され、一緒に簡単な研究に旅に出ることもしばしばあった。
しかし今日の誘いはいつものそれではない。
大学に入るか、研究者の道に入るかの決断。即ち、この生活を続けるのか、僕らと離れて独り立ちをするのかという大きな決断をしなくてはいけなかった。
その話を前に聞いた僕は勿論、ディオもきっと晃は僕らと一緒に大学に来るのだと思っていた。
だから晃の解答には僕ら二人は驚きを隠せないでいた。
『先生、ダニーさんは幸せでした・・・?』
「あぁ、15年も生きたんだ。今の医学ではありえないぐらい長生きですよ。
これはきっと一生懸命協力した君のおかげでもあると思うんだ。
ダニーも、そう言ってたんじゃないかな?」
『・・・・・・』
「晃」
『先生、僕、先生について行きます』
ジョナサン「!!」
ディオ「・・・・・・え」
僕は驚いて声も出ず、ディオは信じられないと言った顔で固まってしまった。
それほど僕らの生活には晃が当たり前のように近くにいたし、晃はいつまでも僕らの守るべき存在であったからだ。
『僕が必要と言ってくれるなら、僕はその子の役に立ちたい』
ジョージ「晃・・・。よく決断したね」
『お父さん・・・ごめんなさい、恩返しもできないまま出ていく事になってしまって』
ジョージ「いや、いいんだ、立派に育ってくれて、自分の道を見つけてくれた。それだけで親として十分誇らしい」
父さんと晃が抱き合っている姿に、兄として弟の成長に喜びながらも、
これから晃がいない生活を考えると、行かないでほしいと口から出てしまいそうになった。
晃が僕らの方に来て、一言謝ると、僕は複雑な顔をしながらも応援することにした。
先生も定期的にこちらに戻ってきているのだから、これで一生の別れになる事ではないし、
きっと心細いのは晃も一緒だから。
ディオは何も言わないまま晃を抱きしめた。
小さな声で何か晃に言っているようで、晃がディオの言葉に『うん』と、短く何度も返事をしていた。
ジョナサン「晃、行ってしまったね」
ディオ「あぁ・・・」
旅立つ時、僕らは昔の晃が僕らを学校に見送っていたように、
玄関で晃が馬車に乗るのを見送った。
あれから何年もたって、所々解れてきては自分で何度も直していた
ディオにもらったのだと嬉しそうに僕に教えてくれた
初めてこの屋敷に来ていた時と同じように、深く帽子をかぶって。