「ここへ来いディオ!聞こえねぇのかァ ゴホ ゴホゴホ」

ディオ「フー。なんだい父さん、薬かい?」

「い、いいや、薬はいらねぇ・・・。ディオ!ちょいとここへ来い。話がある」


いつものように酒を持って来いと言われると思っていたが、どうやら違うようだ。
もしかして母のドレスの時のように晃を売って来いとでも言うのだろうか。
その言葉を言った瞬間、今までの我慢を忘れ、目の前のこの男を殺す衝動を抑えきれない確信がある。


「俺は、もう長い事ねぇ・・・分かるんだ・・・。じき死ぬ・・・。」

ディオ「・・・・・・・。」


目の前の衰弱しきった顔をまじまじと見る。あの中国人の言うとおりあの薬で最後らしく、あのあとは小麦粉を薬に見立てて飲ませるだけで見る見るうちに悪化していった。
死ぬとわかっているこの男が何を言うのか少しだけ興味があるが、どちらにせよ今の俺には最後の言葉がなんだろうとどうでもいい事だった。


「死んだ後の気がかりは、1人息子のおめぇだけだ・・・良いか、ディオ。」


よく言う。死ぬ間際に気がかりだ?それは何に対してだ。今まで気にも留めなかったくせに。
後ろでイスに座ってこちらを見ている晃にきつく握った拳を見られたと思うだけで、
そう言った目の前の男を殴りたい衝動を我慢できた。


「ゴホ!俺が死んだら、この手紙を出して、この宛名の人の所へ行け!
こいつは、俺に、恩がある・・・。きっとお前らの生活の面倒を見てくれる。学校へも行かせてくれるだろう!こいつは、俺に恩があるんだ。ケケケ!」


男がいつの間にか書いた手紙を差し出す。この男、お前らと言ったな、おそらく晃のことも入っているのだろうが、封をしているので手紙の内容を確認する事が出来なかった。


「ディオッ!俺が死んだら、ジョースター家に行けッ。お前は、お前らは頭が良いッ!
誰にも負けねぇ、1番の金持ちになれよッ!」


おそらく全てを理解していないだろう晃に説明すると、少し不安げな顔になり色々考えているようだった。
きっと、置いていかれるのではないかと不安に思ったのだろう。
この町にいることへの不安ではなく、きっと俺とはなれることへの不安だろう。
・・・置いていきはしないさ。

手紙の返事には俺を含め晃を引き取る事が書かれていた。実際どのように書かれていたかはわからないが、どうやら俺が孤児をほっておけない優しい少年だと思っているようなので、以前決めた設定どおりに書かれているのだろう。
相手の晃の心象もよくするためと、今後の生活の為も含め再度お礼の手紙を出す。
晃も手紙を書きたいと言っていたので、最後の方に直筆のサインとお礼の文言を書かせた。
それから俺はジョースター家について調べ、貿易の仕事の事や関係者についても調べ上げた。

ほどなくしてあいつが死に、俺は最後まで親孝行な息子を演じるため葬式も挙げ、墓も作った。なんなら泣いても見せた。
俯いて墓を見ている晃の異色の瞳が雨の中濡れているように見えた。
きっとおれの涙に反応したのだろうと思うととても愛おしく感じた。

前へ | 次へ 1/3ページ

総合ページ 40/131ページ

↓URLリンク修正すること[戻る] [HOME]