生活
あの日から俺はよく晃を自分の部屋に呼びいれた。
実はあの後、ジョジョが何度か晃の部屋の前で立ち止まっている姿を目撃したためだ。
ディオ「やぁジョジョ。晃の部屋の前で何をしているんだい?」
ジョナサン「ディオ、実はあまり晃君と話せていなくてね、少しでも彼の事が知りたくて来てみたんだけど、どうやらいないようだ」
当たり前だ、晃は今俺の部屋で勉強しているのだから。
ディオ「おかしいな、晃はさっき僕の部屋から出て行って、自分の部屋に戻っているようだが?」
ジョナサン「え・・・」
ディオ「昼寝でもしているかもしれないが、また今度にしてはどうだ?」
ジョナサン「そ、そうするよ・・・」
ディオ「まぁ、また来たところで晃が開けてくれるかはわからないがな」
自分自身も、本当の目的は定かではないが、晃とジョジョを会話させることは避けたい。
ジョジョは確実に晃を気にいるだろうし、晃の方は・・・正直予想がつかないからだ。
部屋が別々な為、一人でいる時に何をしているのかわからないし、それとなく聞いてもはぐらかされてしまうし、何よりあのアホ犬と遊んでいる姿を目撃した時は目を疑った。
晃は目的があるのか、ただの気まぐれかはわからないが、時に愛想を振りまき、何かに懐いたと思えばまた別のものに興味を示し去っていく。
それでも俺が声をかければ第一に寄って来るし、俺の言う事は必ず聞く。
俺の邪魔にならいようにと部屋を出ようとした時には、晃に一緒にいる方が集中できると言って膝の上に乗せる。
これは半分本当だ。晃がいると落ち着いて読書ができるし、思考も冴え、頭に入ってくる。
もう半分は晃を独占するため。
ふと重くなった腹に気がつくと、晃が猫の耳を出して気持ちよさそうに眠っていた。
夜にはナイトキャップをかぶらせてはいるものの、心配だからとほぼ毎日俺の部屋で一緒に寝るように言ってある。
召使たちには、晃が、俺が恋しくて一緒に寝ている仲のいい兄弟としてしか映らないだろうし、それは間違いではないのだから。
『んっ』
ディオ「晃?起きたのか」
『んっんー 起きたよーおにーちゃ、ぁあああんっ!!』
ディオ「ンッンー?どうしたのだ晃」
『みっ耳触られるの苦手だって言ったでしょうっ!?///』
ディオ「ククッ、そうか?随分気持ちよさそうに寝ていたのだが?」
『やぁあ、意地悪しないでよっ』
嫌がる晃が可愛くて、ついからかって耳を触ってしまう。
それにどの高級な生地や毛皮よりも本当に触り心地がいい。
耳の無い状態でも英語が上達していけば、猫耳がある晃とははっきりとした会話を楽しめるようになった。
どうやらこの能力も上手く制御できるようになってきているのだろう。
ディオ「たどたどしい晃もいいが、こうして晃と二人で話すと・・・落ち着くな」
『僕は耳を触られると落ち着かないけどね、でもやっぱり耳がある方が便利だなぁ。
普段皆にどういう風に僕の英語が聞こえてるのかめっちゃ気になる』
ディオ「そうだな、とても微笑ましい感じかなぁ?」
『おお、めっちゃ馬鹿にされた笑いですなおにーちゃん』
まるで猫同士が甘噛みをするような、くすぐったい感覚が好きだった。
安らぎの中にいるのに、それでも自分を見失わないでいられる感覚、夜の闇と、昼の光の間の黄昏の中のような曖昧な空間の中にいるような。