考古学
「いつもすみません、ディオさん」
ディオ「薬をあげる事ぐらい容易いさ」
「年は取りたくありませんな。階段を登るのが、結構苦になりました」
ディオ「なあーに、構わんよ」
年老いたジョースター卿の執事から、笑顔を張り付け、お盆に乗った水の入ったコップと薬を受け取ると、ジョースター卿の病室へと続く階段を昇り始める。
執事が俺を見届けた後去っていく足音を確認し、周りに誰もいない事を素早く見渡して自身のズボンのポケットから用意していた、似ているがまったく別の薬を取り出し、お盆の上の薬とすり替える。
薬、と言えば聞こえはいいが、これは東洋の秘薬。
そう、以前父に与え続けていたものと同じ毒。
七年待った・・・本当は晃がいる時は、殺害などと言うリスクを冒す事など考えてはいなかったのだが、あの日から俺はこれ以上時間を無駄に出来ないと悟った。
だが、慎重を期さなければいけない。築いた信頼をそのままに、財産継承権を得たうえで殺さねばならない。
顔に出る笑みを押さえていると、図書室からジョジョが出て来ていた。
ジョナサン「ディオ、今・・・その薬どうした?」
ディオ「どうした、とは?」
まさか、見られた・・・
ジョナサン「君はいつも、父さんに薬を運んでいたのかい?」
ディオ「あぁ、それが?」
ジョナサン「七年前、君のお父さんが出した手紙・・・。偶然見つけたよ・・・。読もう!
「・・・私は今・・・病にあります。多分死ぬでしょう。分かるのです。病名は分かりませんが、“心臓が痛み”“指が腫れ”“咳”が止まりません・・・私が死んだらどうか、息子のディオと晃を・・・。
僕の父さんと同じ症状だーッ!一体これはどういう事だッ!ディオーーーッ!!」
ジョジョの読み上げる手紙を聞きながら、盆を机の上に置く。
後半の戯言はどうでもいい。問題は、前半に記された病状がジョースター卿のそれと、まったく同じだと言う事だ。
当然だ、同じ毒薬を、しかも同じ人物から呑まされているのだから、症状が食い違う事の方がおかしい。
投函する時点ではすでに封がされており、手紙の内容を知らなかったのだが、その時は晃の事ばかり頭にあって気付きもしなかった。
まさかあろうことか自分の病状をその手紙に記していたとは。
ディオ「君は一体何が言いたい?」
ジョナサン「その薬、調べさせて貰う!」
薬をつかんだジョジョの手を素早くつかみ上げる。
ジョナサン「うう・・・・・・う」
ディオ「ジョジョ!その薬を調べるという事は、我々の友情を疑う事!友情を失うぞッ!」
ジョナサン「ううっ!」
とはいえ、父の病状が同じだからといって、なんだと言うのか。
同じ病気と言うだけの事かも知れないではないか。
ジョジョ自身も確信がないのか、俺の目に威圧され目線をそらした。
ディオ「ジョジョォ・・・その薬を盆の上に戻せよ・・・。
そしたら、君の馬鹿げた考えの事は忘れよう」
あくまでも冷静に、しらを切りとおす。
今は何よりこの薬を戻させることが先決。
奪われたところで、東洋の薬など正体がわかる代物でもないが、
それに他の殺害方法などほかにいくらでも考えつく。
ジョナサン「ディオ!紳士として、君の実の父、ブランドー氏の名誉にかけて誓ってくれッ!
自分の潔白をッ!自分の父親に誓えるなら、僕はこの薬を盆の上に戻し、二度とこの話はしない!
さぁ、誓ってくれ!」
ディオ「ち・・・誓いか・・・ぐぐぐ・・・」
ジョナサンのそんな言葉に、私は激昂した・・・
してしまった。