いつものように喧嘩をして、いつものように金を奪い、食いものを盗み、
いつものようにただ目的もなく表通りから一つ離れた裏道を歩いていた。

きらびやかなブランド品を身に付けた金持ちどもが歩く表通りのにぎやかな声が、
とても耳触りで、適当に誰か知らを脅し金品を巻き上げようかと考えたその時、
俺の名を叫ぶ声と数人の男の足音が聞こえた。

さっき殴り倒した男どもの仲間だろうか、持って生まれた力のおかげで負ける気はしないが、かなりの人数のようだし面倒だ。
表通りに出て、人ごみの中紛れ込みながら別の地区へと移動する。
その時も周りの人間はまるでゴミでも見るかのような汚い視線を俺に向け、怯えるように顔をそらし避けて行く。
・・・歩きやすくてちょうどいい。


「まって彼女!少しだけでもいからさ!!」


俺はまた裏道に身を隠そうと角を曲がると、後ろから走ってきた女が追い抜いて走って行った。
男の声からしてナンパから逃げていたようだが、後ろ姿から見ても黒髪の異国の女。
女・・・大方父親は、よそに女でも作って出て行ってしまったんだ、
そう思うと助ける気すら起こらない。


シーザー「女に優しくとか、くだらねぇ・・・実にくだらねぇ国だ」


頭に綺麗に結ばれたリボンでいいとこのお嬢様だとわかるし、次に会ったら金でもせしめるか。
走りあった後を追うように道の奥に入って行くと、いつもはゴミ臭いこの道が、
少し石鹸のいいにおいがした気がした。


結局その女はすぐに大通りに出てしまったようで、
遠くのお店に入って行く小さな姿を見かけてそれっきりになった。
まぁ、思えばべつにあいつからじゃなくてもいいんだから、俺は何を固執しているんだか。


シーザー「珍しい黒髪だからな、まぁ金持ちなんかドレスは綺麗でも顔はどうせ醜いだろう。
見た所スタイルはいいが背も小さいしまだ子供か・・・」


なんとなくあいつの容姿がどんなものか気になって、店から出るまで外で待っていることにした。
少しして、ジェラートをもって嬉しそうに笑う黒髪の女が出てきた。


シーザー「っ・・・なんだ、期待はずれだな・・・」


あぁ、期待はずれだ、どんなに醜いかと思ったのに。
この国で男に甘やかされていい気になっている所に、罵声を浴びせてやろうと思ったのに。

ふらふらと、ドレスのすそと一緒に揺れるそれ以上に柔らかそうな髪。
オレンジ色のジェラートを持っている小さくハリのある手。
嬉しそうに見つめているスカーレットとターコイズブルーの大きな瞳。
ピンクローズの唇が弧を描き、髪を複雑に縛っている三角が羅列した長いリボンを揺らしながら出て行く姿を、俺は当初の目的も忘れ時が止まったかのように見送っていた。

その時、左腕に激痛が走ったッ!
痛みに振りむいて見てみれば隣の男が掴んでいるナイフが、俺の腕に刺さっていた。
彼女に見とれている間にこの男に気づかず刺されたのだ、
やはり女等、厄を呼ぶ生き物なのだと言わんばかりに血が流れ出していた。

俺はその男を力を込めて殴りとばし、追ってくることから逃げるように走り出した。



前へ | 次へ 1/5ページ

総合ページ 47/87ページ

↓URLリンク修正すること[戻る] [HOME]