大勢が各所に散らばっているせいで、そこらじゅうを走りまわされ、
もういっそのこと一人ずつみつけてぶちのめそうかと苛立ちが頂点に達しそうになったとき、俺の体に何かがぶつかった衝撃があった。


『Σわっ!?』

「っ!!」


そいつの姿が目に入った瞬間、無意識的に相手の腕をとってしまった。
衝撃と入っても俺とこいつの体格差から俺はびくともしなかったし、
逆に、小さいこいつは後ろに弾きとばされてしまったんだろう。
ふいに、石鹸のいい香りがかすめた。


『auh・・・gomennasa、bokuyokumaemitenakattakara』

「お前ッ!」


今も俺の腕で支えられ、転ばずに反り返っている女をよく見ると、あいつだった。
この怪我の原因でもある、あの少女だった。

怯えているのか、眉が垂れ下がって俺を見上げている目に、
こっちが助けたと言うのに、この少女の前に俺がいると言う事だけで罪悪感を感じる。


『???;』

「お前、何でこんな所にいるんだ!」

『e?っte kega!!kegasite!!』


俺の問に答えず、少女は俺の腕を見て何やら騒いでいる。
・・・?、血が怖いのか?
まぁ、見た所ドレスもいいモノを着ているし、どう見ても良家のお嬢様だ、怖いのも当たり前か。
俺を呼ぶ男の声と足音が近づいてきており、今この少女をこの場に置いておくのはまずいと判断した俺は、少女の腕を握って全速力で走りだした。


「くそっ!!」

『ctyo!?』


走っている間に、何で俺はこんな足手まといを連れて走っているんだと気付いた。
いや、この俺の走りについてきているんだ、思った以上にそこまで足手まといではないのだが、
むしろ、あの場で置いて行けば、きっとあいつらの足止めになっただろう。
可愛い顔と服の上からでもわかる小さいくせに男好きのする体系、なにも知らず穢れのない怯えたような目・・・。

そう思って、あいつらにいいようにされるこいつを想像したら、余計にこの腕を離したくなくなったのは・・・、あいつらにいい思いをさせるのが癪なだけだ。

なんとか逃げ切り、少し息を切らした俺と、俺の走りについてはきたが地面にへたり込んでしまった少女。
俺も少し疲れたのと、腕の痛みも合ってその場に座り込む。

よく見ると、服は高そうだが所々手作りのような刺繍がある。
拙いそれは職人の手ではないだろう、まさか・・・自分でやったのか?
綺麗に結ばれたリボンは少し形が崩れているが、本人は気にしていないのかじっと俺を不思議そうに見つめ返してくる。

なんか・・・こいつに見られていると思うと、イライラする。
なんかこうっ、いつもとはちがう苛立ちが、俺の胸を襲ってくる。
呼吸を整えているはずなのに息苦しいし、走っていた時よりも体が熱くなるッ。




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