伊太利亜
「さっさと帰れっ・・・!?」
『a、udenokizunaosudakedakara!!etto、itariagowakaranaiyo・・・』
「お前何しているんだ!!離れろ!」
俺の言葉が聞こえないのか、少女は俺の腕を優しく握ると、身振り手振りでなにかを言っている。
必死なその姿に俺も大人しくされるがままになっていると、少女は鞄からハンカチを取り出し俺の腕に当てた。
「お前・・・イタリア語話せないのか?」
『い、いたりあーの?itariago?』
どうやらイタリア語を話せないらしい。
やはり旅行客かと少し残念に思っていると、少女は刺繍の入ったハンカチを片手で押えながら自分の髪に手をかけた。
瞬間、リボンがスルスルとほどけ、目の前で長く綺麗な黒髪が揺れ、俺の鼻腔に石鹸の香りが広がった。
サラサラな髪の毛は、リボンが無くなったことで編み込まれていた部分が綺麗にするするとほどけていく。
ドクンドクンと鼓動がさっきより煩くなって、
俺の血がハンカチにしみわたって行くように俺の体中に血が巡って行く感覚に困惑する。
それ以上に戸惑うはずの、俺と同じように、しかし、微かにだけ光る少女の腕を
払いのけることも、寄り添うほど近くにいるその小さな体を押し返すこともできなかった。
傷口を縛り終えるころには、腕の痛みは感じなくなっていた。
なんなんだこれは・・・こんな女にいいようにされて、自分自身が理解できない。
『koredeyosi!daizyoubu?』
「・・・迷惑な奴だ」
『douitasimasite?///』
「ッ///」
はにかみながら笑う少女に、下がっている眉は元からなのだとわかると、
俺のことを怖がっていたのではないのと理解すると同時に、
彼女の好意により自分は治療されていたのだという今更のことに気づく。
こいつはただの旅行客、こんな裏道で出会った小汚いチンピラを、助ける利点がどこにある。
ましてや、俺は最初はお前から金を奪おうとたくらんでたんだぜ?
そう言ってやりたいが言葉も伝わらない彼女は、俺の顔を見た後、一瞬
笑顔はそのままに、その目に深い悲しみと絶望の色が映った