悪報
おっさんを倒して観衆から拍手をもらったが、同じ席に座っていた幹部であろう男が立ち上がった。
俺は晃を隠すように、そして晃が飛び出していかないように手をつかんだ。
晃も怖がっているのが、背中のシャツが引っ張られている感覚からわかる。
こちらに近づいてくる男の様子を探りつつ拳を構える。
「いや!子分の無礼を許してください。
マダム・・・あなたはエリナ・ジョースターさんでしょう?
私はスピードワゴンさんに大変世話になってやしてね、あんたのことも以前ロンドンで教えられて知ってるんですよ。会えて良かった。
実はさっき知った裏の情報でまだこの国の新聞屋とかには知られてねえんだが、スピードワゴンさんが殺されましたぜ・・・
エリナ「!」
ジョセフ「なっなんだと!」
「噂では殺ったのはチベットからきた修行僧」
ジョセフ「なっなんだときさま!
晃とばあちゃんの前で、場合によってはゆるさん!」
俺はすかさず晃の体を抱き寄せる。
目に光がない・・・この目は、昔俺を見て泣いた時の目だ・・・。
晃を守ると言った時に見せた・・・絶望と悲しみで彩られた・・・。
俺は抱きしめた晃の耳元で優しくゆっくりと名前を呼んだ。
夢にうなされている時によくやるように、こっちに戻ってきてほしいという願いを込めて何度も名前を。
ジョセフ「晃、晃・・・大丈夫だ、兄さんがついててやるから」
『・・・にい・・・さん?』
ジョセフ「晃・・・よかった」
意識が戻ったのか、いつもの晃の目に戻って俺の名を呼んでくれた。
酷い時は、ずっと誰かの名前を呼んでいるから・・・深夜何度も抱き上げて背中をさすってやった記憶がよみがえる。
そうか・・・わかった。
晃がこの目をするのは、時折見せる俺に誰かを重ねた寂しげな目をするのは、過去に誰か大切な人を・・・亡くした?
ジョセフ「・・・修行僧、ストレイツォとかのことか!」
「メキシコ奥地の河で流れ着いたスピードワゴンとその一行の二人らしい死体を発見した者の話しだ。
どこでなぜ殺されたのかも、修行僧がどこへ行ったのかも誰も知らない」
エリナ「わ・・・わかるような気がする。
きっと・・・たぶん、スピードワゴンさんがかつて話した石仮面と・・・」
エリナばあちゃんは何かを言おうとしてそれをやめた。
晃の様子が一気に変わった・・・晃が、関係あるのか?
二人の表情が一気にくもり、不安と恐怖の色に染まっていた。
石仮面・・・今まで全く聞いたこともなかったが、これがなにか晃の過去と関係があるのならば、晃のこの闇を消し去る手掛かりになるのならば。
そして何より、じいさんの安否と関係があるのならば。
俺は知らないままでは許されないのだと直感した。