エリナ「わ・・・わかるような気がする。
きっと・・・たぶん、スピードワゴンさんがかつて話した石仮面と・・・」


ディオ・・・そう、私たちの運命を狂わせた男。
そして、晃の運命を今でも縛り付けている存在。

普段は忘れて・・・いえ、忘れようと苦しんでいたのでしょう。
彼は笑顔で昼を過ごし、夜に悪夢にうなされては何度も何度も暗闇に謝っていた。

それをなだめられたのは、ジョナサンにそっくりなジョセフだけ・・・。
次の朝に何度夢について本人に聞いても「夢を見ていない」と言われ、本当に何も覚えていない様で、それが過去を忘れようとしているようで、自己防衛故になのかと思うと私もそれ以上は聞けませんでした。

一度、あの事故について、一度だけ、少しだけ、スピードワゴンさんと一緒に晃に二人が死んだことを話した時、
彼の目は・・・話しが続くにつれてだんだんと暗く澱んだ瞳へと変わりました。

その瞳を見続けると同時に、背筋が凍った。

まるで、あのディオを目の前にしたかのような感覚に、でもそれが自分へ向けられているものではないとすぐにわかりました。
その濁った目の先に映っていたのは、目の前の私ではなく彼自身なのだと・・・、
そのどす黒い怒りと悲しみの矛先は、二人を守れなかった自分への感情なのだと。

それに気づいてはっとすると、彼の目はいつもの穏やかな、ジョナサンのような表情に戻って何も言わずその小さな少女の体で私を抱きしめ、小さくごめんと謝って、私に涙を見せる事はありませんでした。

私はそれ以上、二人について詳しく話すことができませんでした。
それは、彼が制止したからではなく、彼があまりにも・・・押しつぶされてしまいそうだったから。

彼が、弱味を見せるのは・・・ジョナサンとディオにだけ・・・。
スピードワゴンさんにすら見せない彼の涙、見せないから拭ってあげることすらできない彼の悲しみ・・・


ジョセフ「だが!」

「おぱあぁおぉおっ!」


ジョセフ「いくら真実とは言え、そんな最悪な情報を晃に、エリナばあちゃんにいきなり聞かせたのはゆるせねえ!
怯えさせて悲しませちまったじゃあねーかこのバカたれが!」


あぁ神様・・・これ以上、彼を苦しめないで。
ジョナサン、彼をどうか守って・・・
ディオ・・・彼を・・・

私は、光の輝きを失ったかのような彼の瞳を抱きしめた。
力の限り、私にすがりついてほしいと、腕を体に回し、頭を撫で、ジョセフではなく私に助けを求めてほしいと。


エリナ「ご・・・50年前の事が・・・いまだに・・・続いている・・・なんて・・・。
ジョナサンと同じように・・・スピードワゴンと同じように・・・晃・・・。
おお、なんということ・・・、50年も昔の事が・・・もう終わったと思っていたことが続いているなんて・・・」

ジョセフ「こわいのか?おばあちゃん。俺が守ってやる!二人とも!!!」

エリナ「ち・・・ちがうジョセフ・・・。
お前の事だよ・・・お前が・・・お前と晃が巻き込まれて行く運命の事が怖いのです」

ジョセフ「・・・それが運命なら・・・それに従うぜ!」


あぁ神様・・・最愛の人との子を、貴方はまた試練へと導くのですか。

あぁ神様・・・貴方はまた私の腕の中にいる最愛の人を奪うのですか。


私が愛した彼は、私が愛する彼は、私の腕の中で
どす黒く濁った眼を自分自身へと向けていることに気づきませんでした。




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