激白
あの後、俺たちはまたタクシーを捕まえて家に帰った。
スモーキーとはその場で別れたが、車内はだれ一人言葉を発せず、ただただ晃がエリナばあちゃんの手を強く握っていた。
部屋で休むえエリナばあちゃんの為に紅茶を入れている間に、俺にサンドイッチを作ってくれた晃は、ばあちゃん用のサーバーごとカップを二つ持って出て行った。
俺は、机の上のいつもよりマスタードの多いサンドイッチを一つ口の放り込み、残りにフードカバーをかぶせ晃の後を追った。
扉の向こうから晃の声が聞こえ、聞き耳を立てる。
二人とも凍えなのか上手く聞こえないのにしびれを切らし、物音をたてないようにドアを開ける
『・・・セフを守るために。僕は過去を・・・知らなくちゃいけない』
ジョセフ「なーんだよ、二人だけで内緒のお話し?
・・・俺にも、聞かせてくれねぇか?」
『ジョセにいさっ・・・』
ジョセフ「晃、忘れたわけじゃねぇだろうな」
『・・・わかった』
飛行機事故、俺達はお互いの気持ちがわかった筈だ。
無事でいてほしいという願い、そのために自分のことを犠牲にするほどの思い。
晃が俺のことを大切に思っているように、俺も晃のことが大切なのだと。
だから一人で抱え込まないでほしいと強い意志を目に宿しながら晃を見る。
晃は俺の言葉を完全に理解したわけではないようだが、意志は伝わったらしい。
ジョセフ「(それでも、俺の意志を尊重してではなく「俺の安全の為」に了承したようだがな)」)
エリナ「わかりました・・・。
私もスピードワゴンさんから聞いた限りでしか知りませんが・・・。
石仮面をかぶり、血をその仮面に吸わせる事によって仮面から伸びた針が脳を押し、吸血鬼になる・・・と。
吸血鬼になれば、人間の血を飲む事によってどんな傷もすぐに癒え、老いることもないと」
ジョセフ「その石仮面ってのがどうしてスピードワゴンのじいさんと関係あるんだ?」
エリナ「関係があるのは、彼ではなく私たちなのです」
ジョセフ「どういう事だ?」
エリナ「石仮面は・・・私のフィアンセであるジョナサン・ジョースターの持ちモノでした」
ジョセフ「なっ?!俺のじーちゃんがっ!!」
エリナばあちゃんからじいさんのことを話してもらう時、いつも「優しい人だった」とか「紳士的で素敵な男性」なんてノロケ話のような思い出話だけだった。
それ以上のことは聞いてはいけない気がしていた。スピードワゴンのじいさんからも同じようにどれだけ素晴らしい人か永遠と語られるから内心うんざりしていたし、何より晃の前ではまるでタブーであるかのように二人ともそういう楽しい思い出話すらしなかった。
それはまるで、俺の前で両親の話をしないようにしている二人と同じ姿だった。
だから、俺もそれ以上は聞かなかった。それで晃の何かが守られている気がしていたから。
エリナ「勿論、彼は考古学者を目指すものとして、ただの研究対処で石仮面の秘密を追っていました。
しかし、ある日その仮面を彼の兄弟であるディオが被ってしまったのです」
ジョセフ「ディ・・・オ?」
エリナ「ディオは・・・彼らの父であるジョージ一世を毒殺しようと目論んでいました。
それに気づいたジョナサンが解毒剤と共に彼の証拠を見つけ屋敷に帰って来た時に・・・。
追いつめられたディオは仮面をかぶり吸血鬼になったのです。
それから・・・彼らの戦いについては私は詳しくは知りません・・・。
ですがその戦いの際に、石仮面はスピードワゴンさんの手によって砕かれたのです」
ジョセフ「待ってくれ、そのディオはどうなったんだ」
『っ・・・』
じいさんの兄弟だというのに初めて聞いた名前に不審に思いつい口にしてしまった。
瞬間晃の体が反応したことに気づく。部屋の暗さのせいか、うつむいたその顔の瞳が黒く濁ったように見えた。
エリナ「彼は・・・私たちの乗った船の事故で・・・
ジョナサンと共に・・・亡くなりました」
ジョセフ「そうか・・・ありがとなばぁちゃん」
『エリナ、君が知っているのは・・・』
エリナ「・・・これだけです」
『そう・・・ごめんね、有難うエリナ。
今日はもう休んだ方がいい・・・行こうジョセ兄さん』
いつもの晃らしからぬ雰囲気に俺はただその小さな背中について部屋を出た。
震えることもできず、手に力を込めて耐えているその小さな背中に