23ぺーじ。
シノは案外良く食べる。
其れは今まで食べていなかった反動なのか、其れとも元々の体質なのかは分からないが食べる。本当に、其の小さな体の何処に入っているんだと思ってしまうほど。
シノは感情表現に乏しい部分がある。
そもそも言葉として感情を表す事など、言葉を知らなかった彼女には未だ難しいだろう。
然し其れだけではなく彼女には感情といえるものを、エーミールやグルッペンは感じたことがなかった。
原因は、表情である。
言葉を覚え始めて、嬉しいだとか楽しいだとか、好きや嫌い、痛い痛くない。感情やその他心身の状態に関してしっかりと理解はしているし感じ取ってはいるものの、其れが表情に出ないのだ。
何時も無表情で、嬉しいや楽しいと言うものだから、彼らは心配していたのだが、一つ。気付いた事があった。
「ホンマ、シノは食べてるときだけ嬉しそうな顔出してるよなあ。 普段あんまり表情に出ぇへんのに」
「……わからない、表情」
「また鏡見てみ? 何時もは無表情やけど、食べてる時はホンマ分かりやすいくらい嬉しそうやで〜!」
コネシマとシャオロンがそう言いながらシノの頬をぷにぷにと突く。
其の様子を見てエーミールは安堵していた。
食事の際に見れる、シノの本当に嬉しそうな表情。彼女は感情表現が下手くそだが、感情が無いわけではない。其れがはっきりとわかって、エーミールは我が子の成長を見守る母親の如く、微かに笑みを浮かべた。
ぷにぷに、ぷにぷに。
「あの、そろそろ突くのやめてあげてくださいよ…… ちょっとシノちゃんが嫌がってます」
微かに口を尖らせているシノにエーミールは気付いてそう言ったものの、そんなシノの様子が可愛くて笑いを堪えられなかった。
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