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「りんご、一箱、もも、一箱」


鞄を肩に掛けて八百屋のおじさんにそう言ったのは、紛れも無くシノであった。
おじさんは気前良くシノちゃんやないか、と言って林檎と桃を一箱ずつ用意する。
然しそこでおじさんは気付く。何時も誰かしら幹部がついているというのに今日はいないではないか。そのことを尋ねれば、シノは答えた。


「今日、一人。おつかい」


「おぉそうかい。偉いねぇ。でもシノちゃん、これ一人で運べるのかい?」


「平気。力持ち、わたし」


シノはそう言って八百屋のおじさんにぴったりお金を渡し、林檎と桃の入った箱を軽々担いで歩いていった。
其の様子におじさんや、周りにいた魚屋の店主までもが、逞しいねぇと声を漏らした。


今日はどうやら重要な会議があるそうで、シノはその間におつかいを頼まれたのだ。
まだ学習途中のシノにとって会議の内容はちんぷんかんぷん。参加しても意味が無い為、こうやっておつかいに出してくれた事はとても嬉しい事だった。

次に寄ったのは和菓子屋。
和菓子屋の若い女店主はシノを見るなり嬉しそうに顔を綻ばせた。


「おねえさん、おまんじゅう、二十四個入り、二つ」


「はぁい、二十四個入りのゆっくり饅頭二つね?ちょっと待っててね」


「ん」


暫くして女店主は二つの箱を持ってやってきた。
包まれた二つの箱を、シノは袋に入れて御代を渡す。そして再び林檎と桃の箱を担いで、今度は城へ向かっていった。


「……シノちゃん、逞しいなぁ」


「うちの馬鹿息子も見習ってほしいもんやな」
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