十一話


「あっ、紗絵さん。こんなのどうです? "現代アートの世界を知る" !」

「うーん…… 理屈っぽすぎてよくわかんないんだよね、こういうのって……」

「やっぱ? 俺からしたら、紗絵さんなんか典型的な感覚派やもん」

「そうなの?」

「前に絵、見せてもらった時あっこがどうで、こうでって、俺には全くわからんかったし! え? 何がちゃうん? ってな!」

「えー、僕も紗絵ちゃんの絵見たいなぁ。美術部遊びに行っていい?」

「だ、ダメ! ……自分の納得したもの以外見せたくない、ので……」


勢いよく拒否してしまったことに気が付いて言葉を足すと、鬱さんはきょとんとして、チーノはくふくふと笑う。何がおかしいの、と言うとチーノはいいや何でも、なんて言って本の仕分けに夢中になるふりをし始める。

一体何なのよ、とブツブツ呟いているとふと鬱さんが頬を緩ませて言った。


「絵が、好きなんやな」

「……?」

「自分の納得できるもん以外は見せる気ないって、絵に対して愛とかやる気とか強い気持ちが無いと言えへんやん。何となく上手くできたし見せよーなんて奴はよぉおるけど、ホンマに自分が見せてもええって思うもん以外外に出しませんって、絵に対する気持ちを感じる」


真っ直ぐなんやな、紗絵ちゃんは。

思わずと言ったように笑った鬱さんの言葉に、私はワンテンポ遅れてからようやく意味を理解し、咄嗟に手に持っていた本で顔を隠した。


「あ、紗絵さん超照れてる!」

「さっきはゾム照れさせたのに、自分も照れちゃってな!」

「ゾムさーん! 今紗絵さんが顔真っ赤にして照れてますよー! 見ないんですかー!?」

「ばっ、ちょっとチーノ!!」


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