十七話
──とかなんとか意気込んでたのって、一体何処の誰だっけ。
椅子に溶けたアイスみたいに背を預ける私。首を起こして真正面を見るが、そこには花火の絵。けど、何だか気に入らない。これじゃない、そんな気がする。
一度筆を洗い赤色の絵具をべったりつける。そしてそのまま藍色と黄色が施されたキャンバスに……
「あら、いいじゃない!」
「えっ、ああっ、!!」
「花火……輝くもの……素晴らしいわ! さすがね、明石さん!」
「あ、はは……そ、うですかね……?」
突然現れキャンバスを掻っ攫っていったのは美術部の女性顧問であった。
顧問は私の絵を近くで、遠くで、様々な角度で見た後に何やら1人で納得したように頷いて言う。
「これ、今度のコンクールに出しましょう! ぜひ!」
「えっ……!?」
「きっと入賞間違いないわ。ここなんてとぉっても綺麗……深い青の中に黄色い光、そしてぱちぱち弾ける火花の色。夏の輝くもの、素晴らしい表現力ね!」
「う、れしいです……でも、」
「なぁに?」
「……何でもないです」
テキパキと動き回ってベラベラマシンガントークをした顧問は、キャンバスを私の手元に返してから美術室を去ってしまった。
もやもやが募るばかりで、それが何なのかわからない。いや、この絵をコンクールに出すことには断固反対だ、そういう意思はきっちりある。けど、この絵の何処が納得できないのかが自分自身にもわからない。
だから強く出られなかった。出したくありませんなんて言って何でと聞かれたとき、今の私には答えが出せないから。
「……あの先生、せっかちだからなぁ……」
職員室に戻ってもう手続きしてるとか、そんなわけないよね。そう信じたい。
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