十九話
「迷うんだ。何を描こうか、何が描きたいのか。それで煮詰まって、一時期絵が嫌いになったこともあった。顧問なんかは大嫌いだったしな! ……だから俺は一度離れてみることにしたんだ。楽しいことや嬉しいことを経験して、それを描きたいと思った時に描く。……君も、もしかしたら考えすぎてしまってるのかもしれないゾ」
「……ふふ、エミさんに聞いた話と一緒ですね」
「え!? あいつ俺の事ベラベラ喋りよって……!」
「でもグルちゃんと紗絵ちゃん似てるし、エーミールが話したなるのもわかるけどな」
けらけら笑った鬱さんにグル先輩はむず痒いような表情を向けた。そんな彼の横顔を見て、私もふと思い返してみる。
楽しいこと、嬉しいこと。描きたい時に描く。
私が絵を描きたいと思った時のこと。それはいつだっただろう。
─小学生の頃、父の描く風景画があまりにも美しかったからだ。だから私は風景画をメインに絵を描いてきたんだった。
……あの時の衝撃と感動は、今でも忘れない。
「……今の私は」
「ん?」
「今の私は、多分、絵を描きたくない私なんだと思います。……昔は、意味がなくても、評価されなくても絵を描いてたけど、今は評価されるために絵を描いてる…… だから納得できないまんまなんだと思うんです。だから……ちょっと遊ぼうと思います。そうしたら、描きたいものも見つかる気がするから」
「……うん、そうだ。それでいいんだ、きっと。落ち着いたなら今日はシャボン玉祭りだな! ほら、これなんかチーノが持ってきたがすごいぞ! 連射型シャボン玉!」
「ふふ、あはは! シャボン玉、私もやりたいです!」
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