四話
まだ汗を額に残してはいるが、私たちに比べれば随分と涼し気な顔でやってきたのは、ワイシャツのボタンを一つだけ外した姿のショッピくんだ。彼は手ぶらでやってきて私たちを見つけるなり少し口角をあげて、うす、と言う。
チーノも、ショッピくんがやって来たことに少なからず喜んでいるようでようやくその重たい足を動かして教室から一歩飛び出した。きっと、狭い新聞部の部室よりもこの廊下の方が風通しが良いはずなのに、彼はふらふらしているように見えて新聞部に愛着があるらしい。
ショッピくんとわいわい話し出したチーノの代わりに新聞部の戸を少しだけ隙間風が入る程度にまで閉めて、さぁ行こうかと声を掛けた。
北館三階、一番突き当りの部屋。そこが社会部の部室だと、彼はそう言っていた。
私たちはなかなか訪れることのない北館を見回しながらその方向へと進む。チーノも北館に入ってからワイシャツのボタンを閉め出して、その辺りは弁えているのだと少しばかり感心。
「北館三階、突き当りの部屋…… ここ、だよね」
「ですね。でもここって空き教室じゃなかったでしたっけ?」
「うーん、静かやし、誰もいる気配ないで? 先輩、からかわれたんちゃいます?」
「……そんな風には見えなかったけどなぁ」
私は帰ろう帰ろうと言い出した後輩二人を半ば無視するように、その正面の戸をノックした。返事はない。
だが、ノックの衝動で横に少しずれた戸の鍵がきちんと開けられているのに気が付いて、私は戸を引いた。
「よぉうこそ、社会部へ!!」
「ぎゃッ、!?」
「あ」
「うえぇ!? 先輩大丈夫っすか!?」
「へ、へーき…… お尻が痛いくらい……」
驚いて、それはまぁ綺麗に尻もちをついた。
戸を開けた瞬間、真正面に構えていたのは先程の先輩と思しき人だった。色素の薄い髪色が自然にセットされていて、黒縁眼鏡の奥の瞳はきりりと鋭いものの厳しさは感じない。
ショッピくんとチーノに手を貸してもらいながら立ち上がって再び彼を見ると、その背後にも数人、生徒がいるらしくショッピくんもチーノも驚きで声が出ない様子だ。
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