「……審神者さま」
「どうしたんですか?」
「2つ言い忘れていたことがあります」
2つもいい忘れていたのか、この狐。
「……ひとつ目は、これから審神者さまが扱うのは、端くれでも神だと言うこと。」
「名前を教えたらいけない、ってことね?」
「知っておられたのですね」
私はこくりと頷いた。小さい頃、神社で聞いたことのある話だ。
「そこで政府から審神者さまに仮の名前を戴いてきました」
こんのすけは私にタブレット端末を渡した。
端末を開いてみろ、ってことらしい。
「…かりのな、ねぇ」
なんと言うか、私のいた時代に多かったキラキラネームとは違い、少し古風な名前だ。
「絶対に、本当の名前を言ってはなりませんよ。神隠しにあってしまうかもしれません」
「なるほど…それで、二つ目は?」
「審神者さまに担当していただく本丸は、少々わけアリな本丸でして…」
わけアリとか言われるってことは、少なくとも過去に何かあった、誰かのものを引き継ぐのか…
「そんなお顔なさらないでください。特殊な本丸ですが、過去に審神者がいたわけではありません」
「……どういうこと?刀は勝手に出てこないんでしょう?」
「そうですね…実はかりのなさまは初めての審神者なのです」
「……ほかに審神者はいないの?」
「…これから他にも能力のある方が見つかれば審神者も1人ではなくなります」
「でもなんで私なの?」
元々の時代で探せばいいじゃないか。
わざわざ過去まで探しに来る必要性が見付からない。
「……それは後でわかるかと」
「ふうん」
多分これ、しばらくは話してくれないやつか。
*
「こちらでございます」
少しここの造りについての説明などを受けながら本丸を周り終えると、先ほど通り過ぎた襖の前でこんのすけは止まった。
「…入っていいの?」
「もちろんですとも」
襖を開けて部屋に入ると、中にある沢山の刀が目に入った。
「……まさかとは思うけど、この刀全部具現させなきゃいけないの?」
嫌だ、というわけではないのだ。一気にこの刀全部が人になっても、私は全員の名前をすぐに覚えられない。
なんとなくすべての刀が出てきたそうにこちらを見つめている気がするが、気のせいだろう。そうだと思いたい。
「今すぐに、という訳ではありません」
「あ、そうなんだ」
「とりあえず一振り選んでいただければ」
どうしようかな、小さい刀から大きな刀、槍もいるらしい。
「………ん?」
なんか一振り(?)だけ異質な形したのがいる。
長い柄の先についたとても反った刃、決して刃が短い訳では無いだろう。ただ、バランス的に短いようにも見えた。
「そちらにいたしますか?」
「…触ってもいい?」
もちろん、とも言いた気にこくりと頷くこんのすけ。
「……っ!?」
ビリッ、と痺れるような刺激。
何かが聞こえる、伝わってくる。
__…まえ…、…………れだ?
ノイズが混じってよく聞こえない。
声に集中する。
__…お前は……誰だ?弁慶ではない…その力、一体……
「……」
なんだこれは、刀?から聞こえてくる。
「彼を呼び出してあげてください。名を呼ぶのです」
「名前は……?」
「……どうすればいいか、わかるでしょう?」
……知らない。知らないけど、きっと…
「…あなたの名は」
__ …
「…岩融!!!」
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