「………………っ?!」
目をさますと知らない天井。
一体此処はここは何処だろう?
とても静かだ。
病院?違う、病院がこんなに綺麗なはずがない。
でも、でなければこんな白い部屋………
「………おや、もう起きてたのですか」
低い男性の声。
どこかで聞いたことのあるような、懐かしい声。
いや、それよりも………
「…………日本語……」
ずいぶん久し振りに聞いた母国語。こんなところで日本語を聞けるなんて…
「やはり日本人でしたか、連れてきてよかったです。どこか痛むところはありませんか?」
「……あぁ、はい。特に痛むところはないと思います」
「……それなら、よかったです」
こちらに優しい笑顔を向けた。
「あの、それより…………」
そこで言葉が詰まる。
聞きたいことがありすぎるのだ。
ありすぎて、何から聞けばよいのかわからなくなる。
「……申し遅れました。私は本田菊と言います。そしてここはイタリア、もうしばらくは安全だと思います」
「………イタリア…………わざわざありがとうございます」
私は数年前にフランスに留学した。
しかし、もうすぐ帰るところで戦争が始まってしまい母国の日本に帰れなくなり、おまけにフランスから追われる羽目となったのだ。
私がいたのがフランスの下の方だったので、日本と同盟を組んだドイツかイタリアに逃げようとしたのだ。
「……本当にありがとうございます」
「いえいえ、私は国としての責任を果たしたまでです……あと、明後日に日本行きの救助艦が来ます。救助艦は中立ですから撃たれずに日本へ帰れます。少し時間はかかりますが、それで一緒に帰りませんか?」
「…………でも」
「私は国なので後で日本政府に殺されたりしませんよ」
「……国…………日本、様…?」
「知ってるんですか?私のこと」
「…知ってますよ、知ってるもなにも…
………だって…
…………覚えてませんか?なまえって名前」
「………………はぁ」
日本さんは、頭を抱えた。
駄目だこれ、絶対痛い子だって思われた。
「……やはりなまえでしたか。
……ようやく見付けられましたよ。
……本当に、こっちは数百年探してたんですからね」
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