ポストを開けると最近よく見る白い封筒。



「何か届いてた?」



「結婚式の招待状、唯ちゃんから」



「ふーん」



「あと、及川さんからも来てるよ」



「まじかよ」



私と英ももうすぐ28になるし、誕生日の遅くない人達は既に28のアラサーだ。



ここ最近は、高校だったり大学だったりの友人から結婚式の招待状と結婚報告の手紙ラッシュだ。



今日だって、私の高校時代の友人からと、英の部活の先輩だった及川さんから結婚式の招待状が届いた。



「最近結婚式するやつ多くね?」



「もう28になるし、なってる人もいるじゃん」



「うん」



英の一番親しかった金田一君は、大学卒業してすぐ結婚して今はもうお父さんだし、私の仲良かった仁花ちゃんも少し前に結婚した。先輩達も、子供持ってたり、生まれそうだったりしてる。



「そろそろみんな結婚したいんだよ」



「なまえもそうなの?」



「私は別に…」



いや、嘘。本当はもっと早く結婚したかったし、するはずだった。



25で結婚して、27とかで子供産んで…なんて夢見てた。



確かにその辺りの年で、結婚する予定だった人もいたんだけど、籍を入れる直前に浮気されて英のところに逃げてきた。



「そんなもんか」



「うん」



英とはそれから4年近く暮らしてるけど、そもそも私達は付き合っているのかすらよくわからない。



一応、英の部屋に逃げてきてから、手狭だからって新しい部屋借りてまで一緒に住んでいるけど、どちらからも告白なんてしてないのだ。



「ねえ、及川さんからの招待状手紙入ってた」



「なんて書いてあった?」



「…Wなまえちゃんの居場所がわからなくて招待状送れないけど、国見ちゃんなら知ってると思ってなまえちゃんの分の招待状も同封しておくね。Wだってさ、俺のとこ来てから新しい住所教えてなかったのかよ」



「そういえば忘れてた、かも」



「まあいいけど」



大体の人と時々LINEしてたし、結構住所伝え忘れてる人多かったかもしれないな。



「結婚式ラッシュなら常にスーツ出してた方が楽かもな…」



「スーツならクローゼットの手前に移しておいたよ」



「さすがなまえ、ありがと」



「どういたしましてー」



そろそろ洗濯物でもしまおうかな。なんて思って洗濯物をしまい始める。



「…あー、なまえ」



「なにー?」



「俺らもそろそろ結婚しようよ」



「え?」



今、なんて言った?結婚しよう?



いやでも、どう考えても今のテンションW靴下取ってWってぐらいのやつじゃん。



「結婚したいんじゃなかったの?」



「あ、うん…うん、そうなんだけど」



「したいけど何?」



「…私たち付き合おうなんて話もしてなかったしさ」



「でも転がり込んで来たあと、わざわざ狭いからってここ借りて一緒に住んでるじゃん」



「それはそうだね」



確かに私も一人暮らしを選ばず、英とわざわざ新しい部屋を借りている。



「その上今なんて一緒に家計簿つけてるじゃん。お互い彼氏彼女も作ってないし、結婚したっていいんじゃないの?そっちの方が税金制度とか楽な部分あるみたいだし」



「確かに」



普段口数少ない英がよく喋っている。なんてどうでもいいことを考えてしまった。



「…だからなまえ、俺と結婚してくれませんか?」



「…はい、こんな私でよければ喜んで」



「俺はなまえだからなんだけど」



「そっか」



なんだか急に視界が滲んできた。



「え、泣いてんの?ごめん大丈夫?」



「大丈夫。よくわかんないけど悲しい気持ちにはなってないから」



「ん。ならよかった」



私みょうじ なまえ、27歳。



婚期を逃すことなく無事結婚できそうです。





(…ねえ、こういう時って最初に何すればいいんだっけ?)

(わかんない。けど、とりあえず指輪買いに行こうよ)




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