結局昼休みは呼び出し食らったお陰で学生証渡しに行けず、放課後になってしまった。
進級してから初めて訪れたこの階。ほんの1か月前はここにいたのに…なんだか不思議な気持ちだ。
学年が違うからか、見た目のせいか分からないが、妙に見られている気がするけど、仕方ない。とりあえず、学生証の落とし主の教室があったので、開いたままのドアから顔を出す。
「すいません、このクラスに赤葦君っていますか?」
ドア付近でたむろっていた男子生徒の一人が言う。
「赤葦ならもう部活行きましたよ」
「え…ちなみに部活って」
「男バレッス。確か今日は第一体育館だったと思うんですけど」
「本当?!教えてくれてありがとう」
「いえ」
教えてくれた子達にお礼を言って、私は教室を後にした。
そう言えば、今日は3年まだ授業あるんだっけ。そんなに面倒なことになることはないだろう。
そんな情報を思い出した私は少し軽くなった足で体育館に向かう。
*
「すいません」
そう言って、突然体育館の中に入ってきた彼女はとても美しい人だった。
「おっ、みょうじじゃん」
「木兎さんの知り合いですか?」
「隣の席のやつ」
彼氏とかではないらしく、安心した。
…ん?
ん???
「てかあいつなんでこんなとこに来たんだろーな」
「…さ、さあ」
彼女と、一瞬目があった。気がしたその瞬間、彼女はこちらに向かって歩いてきた。
「ねえ」
彼女は、俺ではなく隣にいた木兎さんに用があったらしい。
「あのさミミズク、1年の赤葦君って知らない?」
「赤葦はこいつだけどなんだ?後俺はミミズクじゃなくて木兎だ!!!」
「ミミズク頭よりましでしょ」
表情を変えず、冗談を言うこの人はなんだか少し変わった人なのかもしれない。
「それで、君が赤葦君?」
「はい」
「これ、昨日電車に落としてたよ」
受け取ったそれは、昨日無くしてどうするか悩んでいた学生証だった。
「すいません。ありがとうございます」
「いえ、むしろ届けるのがこんな時間になってごめんなさい。それじゃ、部活頑張って」
「あっ、待ってください」
向きを変えて帰ろうとする彼女を引き止めた。
「お礼、させてください」
← →
top
ALICE+