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恥ずかしい、穴があったら入りたい。
という僕は、目覚めた彼に合わせる顔が無くて母の後ろにへばりついていた。
寝ている僕と、起きて混乱している彼を発見した父は、母によって洋介と妃都華に預けられてここから離された。
「・・・つまり、俺は拾われたのか」
「えぇ、私の後ろにいる息子、幸助が拾ってきたの」
にっこにこと話す母に、僕は母が口を開くたびに、彼が口を開くたびに体を震わせた。
それでも、この場を離れようとは思えなかった。
「なんでまた、俺なんかを」
「さぁ?それは幸助ちゃんにしか分からないわ」
ふふふ、と笑う母に僕はびくびくしっぱなしだ。
彼が、僕の顔を覗こうとして母の後ろをのぞき込んでくるけど、僕はその度に顔を彼の居ない方へと向けた。
痺れを切らしたのか、彼は母の後ろに回ってくると僕の顔を手で挟んで固定した。
当然、僕の顔は彼と向かい合うわけで・・・。
「ひっ、あ、あ、あの、あ、あの、あのね、ぼぼぼ、ぼく、僕は」
「落ち着け、何もしねぇから」
助けてくれた奴に、何かするわけないだろ、と彼が笑う。が、そういう問題ではなくて・・・。
首を横に振りたくても、彼が固定しているため動かなくて目に涙が浮かぶ。
「幸助ちゃんは、こう言うお話の仕方なの。ゆっくり、聞いてあげてちょうだい」
そこに、母が助け船を出してくれた。僕のこの話し方は、言葉を話し始めた頃からのもので、直そうと母も父もいろいろしてくれたけど、結局治らなくて、それもいじめられる原因の一つだった。
「け、けけが、し、して、してた、か、か、から!」
「あぁ、ありがとうな」
そう言って、僕の顔から離れた手はそのまま僕の頭にポンッと置かれた。
「よ、よよか、よかった」
自然と顔が緩む。
「・・・それじゃ、長居しても迷惑でしょうし帰ります」
すっと立ち上がった彼が、出ていくという。その言葉に、少なからずショックを受け、僕はとっさに彼の手を握っていた。
「・・・?どうした?」
「ままま、また、またあえ、あ、会える?」
僕の言葉に、彼だけじゃなくて母まで驚いたような顔をしていた。
そして、彼は僕の頭にもう一度その手を乗せると、ぐしゃっとかき回した。
「あぁ、時間作って来るわ。この手当の礼もあるしな」
「ま、ままっ、まって、まってて!!」
そう言って、玄関に向かおうとする彼を引き留めて僕は彼の居た部屋から、今日摘んだばかりの白いお花を慌てて取って来る。
「こ、ここ、これ!」
「・・・ユリ?」
その言葉に、僕は何度も頷く。
「に、に、にお、匂い、お、おな、同じ、だ、だか、ら」
「・・・ありがとな」
「ぼ、ぼく、僕は、こ、こここ、こうす、幸助!あ、え」
彼の名前が知りたくて、でもどうやって聞けばいいのか分からなくて意味の無い声ばかりが口をつく。
そんな僕を、ふっと笑った彼。
「葦名だ。葦名 雄大」
「あ、あし、あしな、く、くん」
僕がそう呼ぶと、彼はふっとまた笑った。
そして彼はそのまま僕の家を出て行ってしまった。
僕は、彼の名前を心の中で呼ぶたびに何だか幸せな気分になれる気がした。
「それにしても、彼。来年、洋介君が入学希望してる高校の生徒さんよねぇ」
「そうだね」
僕は、母のその言葉に首をかしげてしまった。
どこから聞いていたのだろう、洋介が母の言葉にうなずきを返した。
確か、洋介が通う予定の学校は全寮制で少し離れた場所にあるはず。
何で、こんな所に居たんだろう?
僕は、葦名君が出て行った場所を、ぼんやりと見つめていた。
それから、何日か過ぎたけど、葦名君は現れてくれなくて、僕はバイト終わりとか学校帰りに呆然と窓の外を眺める癖が出来てしまった。
そんなある日。
「幸助ちゃん、洋介君に何か伝言はない?」
でんごん?と首をかしげると、母は今日、洋介の学校説明会の日だと言った。
そこで、ハッとして思い出した。彼は、洋介の入学予定の学校の先輩だってことを。
まってて、と言って僕は一枚の小さなメモ帳に一言だけ書いて、洋介に会えたら渡してと言って渡した。
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