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「・・・あの、日積、さん?」
「・・・」
無言が怖い。こんな事、在ったことなかった。
押し倒されるのは、いつもの事だったし、今は部屋の中で知らない人でもない。
それでも、どうしてこんな状況に陥っているのでしょうか?
あの後から、真崎は日積とそれなりに交流があった。
日積は真崎にとって、肩の力を入れなくても良い友人の位置にあったから。
それが、なぜ今こうなっている?
カチャカチャとした音が聞こえたと思えば、両腕をベルトで拘束された。
「おい、今なら冗談にしといてやるから、なっ?日積?」
「・・・」
さらに無言が続いて、ヤバいヤバいヤバい、と焦りだす真崎。
「お前、婚約者がいるんだろ?俺と、こんなことしなくても・・・」
「・・・、あんな奴と番う位なら、舌噛み切って死んでやる」
「ぶっ、物騒なこと言うなよ」
冷や汗をだらだらかきながら、真崎は言う。
「俺が、番うならお前が良い。お前が、信忠が良い」
そう言う日積の顔は、泣きそうに歪んでいて、とても見て居られるものではなかった。
拘束された腕が恨めしい。
「俺は、何のとりえもない人間だよ?そんな俺が良いって言うの?物好きだね、日積は」
と、真崎が笑えば、ごつんっ、と拳が降ってくる。
「俺が、お前を好きなんだ!そのお前が、自分を否定するな!!」
「わかった、分かったから殴るな!」
痛い!と言えば、拳は止まった。
何てバイオレンスな。
「で?何があった訳?俺にこんなことするなんて、なんかあったとしか思えないんだけど」
「・・・婚約パーティーを開くらしい。けど、俺はあいつを認めてない。だから、行きたくない。だから、先に番って婚約自体を破棄出来れば・・・」
「何で俺なんだ?」
と言えば、きっと睨まれた。
「この俺が、お前を好きだってさっきも!!!」
顔を真っ赤にして、睨んでくる姿は美形で強面のはずなのに、全く怖くない。
さっき、殴られたのは痛かったが。
「あー、言っちゃ悪いが俺もアルファだぞ?」
匂いの全くしないこいつは、たぶんアルファであるんだろう。こんな美形だし、頭も悪くない。むしろ、悪知恵が働くくらいだ。
「俺がオメガだ。何の問題もない」
何言ってんだ、と言う顔で日積は首を傾げた。
その言葉に、真崎は唖然として驚いた。
「おおおお、おえ、オメガ!?」
「だから、そう言ってる。そんなに珍しいか?」
こっ、こんな堂々としたオメガ居てたまるか!!!
真崎は、日積を見つめながらそう思った。
「珍しいとかじゃない!つか、嘘だろ?嘘って言え。お前がオメガなんて何の間違いだ?」
「疑ってんな。俺だって、3カ月の発情期はちゃんと来てっし」
ほら、と見せられた抑制剤。そして、腕の中枢に填る抑制器。
「普段はこれで、フェロモンも何もかも無かったものにしてる」
と、言いながら日積はパチンッとその抑制器を外した。
途端に、ふわりと漂い出す日積のフェロモン。
甘い香りに頭がクラクラと酔ってくる。
「・・・っ、はっ、やっぱ、辛い、な」
はっ、はっ、と荒い息を吐きながら、髪をかき上げる日積の姿を見た時には、真崎の理性はブチリ、と音を立てて切れた。
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