4+あとがき
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気が付いたら、ベッドの上で真崎は日積を抱きしめて眠っていた。
体を起こしてみれば、様々な液体に汚れていることが分かる。
そして、何より分かりやすく酷いと思ったのは、枕についていたどす黒い血の跡。
乾いていたが、これはきっと。
そう思って、真崎は急いで日積のうなじを確認する。
そこには、しっかりと己の歯形が幾つも残っていた。
「ん・・・っ、うぅううう、ま゛ざぎ?」
目が覚めた日積の声は酷いものだった。
真っ青になった俺は、とりあえずベッドから下りて土下座をする。
「ごっ、ごめん!噛んだ、俺噛んじゃった!!」
「ん、ごほっ、おれが、いいって、いった」
ごほごほと咳き込みながら、幸せそうに笑った日積。
その笑顔を見て、ホッとする。
とりあえず、声の出しすぎで疲弊しているのどのためにお水を渡した。
「で、でもお前、婚約」
「まだ、正式なものじゃなかったし、俺は反対していた。だから、大丈夫だ」
本当か?と思っていれば、日積の携帯がけたたましい音を立ててなりだした。
「チッ・・・、もしもし?」
音と着信の名前を見たとたんに、日積の機嫌は急降下した。
とても不機嫌そうに舌打ちをすると、そのまま電話にでた。
『蜜葉、今どこに居るんだい?』
「うるさいな。俺がどこに居ようと俺の勝手だろう」
『今日は大切なパーティーが在るから、絶対に帰ってくるように言ったのに』
「その事だが、俺はそれに出ないからな」
『お前にとっても大切な場所なんだよ?』
「俺は、番を作った。もう、婚約者に何てなれない」
そう、きっぱりと日積が言い放つと電話の向こうから、真崎にも聞こえるくらいの大きな声で、何て事だ!と言った声が聞こえた。
その声をとても楽しそうに聞いている日積。
『嘘だろう、蜜葉。お前、日積を潰すつもりか?』
「勝手に決めたのはアンタらだろう。俺の番は、俺が決める。俺は、あんな奴と番うつもり何てはなっから無かった」
『しかし!いや、もう何を言っても遅いのか・・・。分かった。分かったから、一度帰ってきなさい』
「断る。俺は、こいつと一緒に居る。番になったんだからな」
そう言うと、あちらの返答も聞かずに日積は携帯の電源を落とした。
「悪い。長話して」
「いや、そら良いんだけど・・・いいの?」
何が、とは言わないが、それでも意味をくみ取ったのだろう、ギロリ、と睨まれた真崎。
「俺は、お前が良いって言った。お前以外は要らないし、お前以外の物にももうならない」
お前の側に居る。
そう、日積は真崎の目をまっすぐに見て言った。
そうして、先に折れたのは真崎だった。
発情しているからでもなく、ただ真崎を好きだと言ってくれた日積を、手放せるわけもなかった。
「分かった・・・俺は、お前を好きになれる努力をしよう」
そして、日積の家の問題も片付ける努力を。
いきなり増えた難問に、真崎は頭を抱えるが、起きてしまったことを嘆いても仕方がない。だから、これからは日積と一緒に考える事にしようと決めた。
例え、問題が山積みで泣きたくなるほど逃げ出したくなるほどでも。
「・・・そう言えば、発情期は?」
「あぁ、それな。ホラ」
と見せられた腕には、いつの間にか抑制器が填っていた。
「俺の発情期はそんなに強くないし、長くないからこれで十分だ」
「・・・昨日の、あれは?」
「発情と言うより、お前に興奮してたって方が正しい」
ニッコリとそれはそれは綺麗に笑う日積に、真崎は否応なく泣きそうになった。
「頼むから、それ一生外さないで」
「あ?何?嫉妬?もう、お前以外誘う事無くなったから、良いだろ別に」
ちがぁあああう、と真崎は叫んだが日積はどこ吹く風だった。
「別に、俺はお前に襲われたってかまわない」
「俺が構うの!俺が嫌なの!」
「俺の事、嫌いかよ?」
「ちがっ、嫌いじゃないよ!ただね、傷つけたくないだけ」
昨日の事で分かったのは、発情期のフェロモンにやられると、理性を失うって事だ。
獣のように求めて、最悪、失ってしまうかもしれない。それが、真崎は怖かった。
「大丈夫だ。俺は、やわな体してねぇし」
「そういう問題じゃ・・・」
と、言いかけてその口に日積の人差し指が立てられた。
「大丈夫だ。自分を信じろ信忠。それが無理なら、俺を信じろ」
不思議と、何故かその言葉に救われた気がした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「歩、俺さ蜜葉と番って思ったことがある」
ラウンジでいつものように結城と雑談していた真崎。
唐突なその言葉に、結城は、は?とアホ面下げて真崎を見た。
「アルファって完璧な種だとか言ってる人居るけど、全然そんなことなくて、いやそれは分かってた事なんだけど、何て言うか・・・オメガと番うって欠けてる部分を補える気がして」
「あぁ、それな。分かるわ」
完璧と言われる種であるアルファだが、いつもどこか不安で、欠けている感じがする。それが、オメガと出会うことによって、補完されて本当に完全になったかと錯覚できるきがする。
それ程に、オメガの存在はアルファの中で大きなもので、それに気づけるって言う事は・・・。
「運命って、一目見たって匂いがあったって分かん無いけど、俺やっぱり、運命だと思うんだよねぇ」
前途多難だけど、それでも出会えてよかったとそう思える。それが、運命と言うものなのではないだろうか?
そう、真崎は考えた。
「そうだな・・・」
と、結城は珍しく微笑んだ。
END
お久しぶりでございます、屑籠でございます。
いや、えっと・・・うん。とりあえず何かこう”ぐわっ”と書きたくなりまして、二日ほど費やしてこの長さでございます。いつものオリジナルに比べれば半分ぐらいではございますが、楽しかったです。
真崎 信忠ーまさき のぶただー
愛称:ノブ
番:日積 蜜葉
備考:黒縁メガネの似合う美人さん。真崎家の次男坊。
優しそうな外見でアルファのため、襲われかける事数十回。軽いオメガ恐怖症。アルファ専用の抑制剤を使用しており、鼻が鈍い。
たぶん、きっと日積が運命の番なんだろうなぁ、と最近ようやく思った人。
日積 蜜葉ーひづみ みつばー
愛称:ミツ・みつば
番:真崎 信忠
備考:外見俺様遊び人。実は婚約者がいたが、その婚約者が大っ嫌い。で、どうするか考えていた時に出会ったのが真崎だった。発表前だったので、真崎を押し倒してゲットした。
実家のごたごたとかに真崎を巻き込んですまないと思ってはいるが、それでも真崎が良いと思ってしまったんだから仕方がないと開き直っている。
結城 歩ーゆうき あゆむー
愛称:あゆむ
番:???
備考:真崎の幼馴染。チャラい見かけで、昔は遊び人だった。が、今の番に出会って一途になった。
真崎とは授業前に良くラウンジで落ち合って話す仲。外見だけ見れば、とても友達とは思えない。
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