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「君は、彼のことをどう思っているのかな?」
飛鳥が退室した後、にっこりと笑った望月医師に瞳は尋ねられた。
予想していたが、やっぱりか、と笑いたくなる。
「飛鳥を、ですか?今はまだ、としか言えませんね」
「そうかい?その気も無いのに、彼を束縛しているのなら、僕は警察に届け出なければならないからねぇ」
「……医者という職業も難儀なものですね」
まったくだ、と望月医師は笑った。
こう、望月医師には答えてはいるが、出会った当初から瞳は飛鳥がオメガだということを感覚的に知っていた。たぶん、それが運命だというならそうなのだろう。今まで、意識したことなんて無かったが、昨日あのバーで泥酔していた姿を見たとき、我慢できなくなってつれて帰ってきてしまった。まだ、離したくなくて手荷物さえ奪っている状態だ。これが束縛じゃなくて何だという?
あいつの、匂いさえ嗅いだ事も無いくせに、瞳は飛鳥を手放すことができない。運命というものはとてつもなく厄介なものだ。自分の知りたくなかった本能でさえ刺激してくる。
「……なぁ、先生さ」
「んー?何かな、一色君」
「あいつが、運命だとして……いや、何でもないわ」
望月医師は、そうかい?と言って笑った。念のため、サンプルとして血液を少しもらいたいとも言われたので、了承して診察室を出た。
採血が終わったころ、飛鳥も検査から戻ってきていた。
手招きをすると、とても嫌そうに顔をゆがめながらも素直にやってくる飛鳥。その姿を瞳はやけに気に入っていたりもする。
「そっちはどうだった?」
「変わりなしだ……、お前、何かあったのか?」
飛鳥は、瞳の腕を見つめて言う。隣に座っても、そこから視線が離れない。サンプルに採血をしたと言えば、微妙に飛鳥の顔は歪む。
ここは、主にオメガが来るとなって、アルファの検体は少ない。
まぁ、アルファを研究しようなんて酔狂な学者ぐらいしか、今は居ないのだが。絶対的王者、それが世の認識だからだ。
が、瞳はその世論を信じられずに居る。アルファじゃなくとも凄い奴はたくさん居る。それなのに、アルファだけが偉いとか言うアルファ絶対主義者たちを見ていると、気分が悪くなる。
アルファだとかベータだとか、オメガだとか本当は関係なくて、モデルの業界でもそうだが、本当に実力があれば認められる、そう言う世界であればいいのにと思う。
いや、そう言う世界を作っていかなきゃいけないんだろうな。
そう、瞳は思うと飛鳥の頭を何の気なしに撫でた。
飛鳥は、ひどく困惑したような顔をしたが、先ほどの顔よりかは幾分かマシだ。
そうしている内に、再び飛鳥の名前が呼ばれて診察室へと入った。

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