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僕と、的場君が番になって、僕は変わった。いや、そう言われる事が多くなった。
的場君に聞けば、変わったか?と首を傾げる。僕も、不思議に思う。
けれど、的場君の傍に居る人たちとも話せるようになった。
大学で、一人で居ることも無くなった。それは、少しだけ変わったのかもしれない。
「なんつうか、前はもっとこう・・・取っ付き難かった?」
「そうそう、だからこんなサバサバした感じとは思ってなかったってか」
そうそう、と言う皆に僕は苦笑いしか返せない。確かに、人との関わりは避けていたし、大学でも誰とも話したことは無かったから、そう思われていて当然なのかもしれないけど。
「まぁ、面倒くせぇ性格してるのは合ってたけどな」
と、笑う的場君に僕は肘内を喰らわせながら笑う。
「いってぇな」
フンッ、と鼻を鳴らせば、悪かったって、と謝られた。別に本気で怒ってるわけじゃないから、いいんだけどね。
僕は、的場君と一緒に暮らすようになってから、遠慮が少し無くなった気がする。
そんな僕を見て、的場君は嬉しいというが、呆れられたりしないかって心配になる。
僕を疎ましく思わないかって。それで、毎回試すようなことをしてしまうけど、それでもちゃんと僕を好きだって言ってくれる的場君がとても、とても僕も好きだ。
「陽音っ!!!」
そんな中、学食のホールに響く僕を呼ぶ声。
その声は、非難めいていて僕はビクッと体を竦ませた。
「はる、ひ・・・?」
何故、春陽がまた僕を探していたんだろう。
僕が体を竦ませれば、大丈夫だというように的場君が抱きしめてくれて、安心する。
「陽音はどこ!?」
髪を切って、色を変えた僕に気が付かないのか、キョロキョロとあたりを見回す春陽。
とりあえず、このままだと周りの人の迷惑になりそうだと、僕はどうしようかと的場君を見上げた。
彼は、頷きニッコリと笑った。それだけで、安心できてしまうのは何故なんだろう?
「うるせぇな」
ハーレム、と呼ばれているこの集団は、この学校でも一目置かれている。まぁ、ハーレムっても見目の良い集団ってだけだから、何だかちょっと違う気がするけど。むしろ、ホストクラブとかキャバクラとか言われた方がしっくり来る気がする。ある意味、オアシスと呼んでる人もそういえば居たきがする。目の保養だとか何とかで。
その集団の王たる的場君の声に、喧騒としていた周りは途端に静かになる。
的場は、強いαだ。ただ、この学校の中で強いαと言うだけだが。それでも、番が出来たってΩもαも、βですら寄って来る。人望って奴もあるのかもしれない。
「お前、こんなに近くに居て陽音のことわからねぇのかよ?」
それでも兄貴か?
そう、冷たく言った的場君に、春陽の目は止まる。
こんなに、怒っているような雰囲気の人間に、よく春陽はニコニコとして近づいてこれるな。
僕なら、絶対に無理だ。
「えっと、的場君だっけ?陽音を知ってるの?あいつ、今どこ?」
「お前、マジで気がついてねぇのかよ。ほら、陽音?」
「・・・僕に、何か用なの春陽」
促されて、そのまま春陽に目を向けると、春陽は驚いたような顔をして後ずさった。
「なに、それ?僕の知ってる陽音じゃない!」
「僕のほうが、何それなんだけど?僕に何か用が有ったんじゃないの?」
今更、否定される事には慣れている。的場君の眉間の皺が深くなったけど、その件に関しては何とも出来ない。
後で、何か言われそうだけど。
「僕、陽音が引っ越したなんて聞いてないんだけど!?」
「言ってないからね」
答えは簡単だ。大体、僕は家を出た、いや追い出された人間だ。僕に、報告の義務も何も無いよ。
「そのお陰で、僕ココまで足を運ぶことになったじゃない!」
「そんなの知らないよ、勝手に来たのは春陽でしょ。で?本題は?」
僕は、春陽の無駄な話に付き合ってあげるほど、心は広くない。面倒だと、本当に思ってるから昔から半分話聞いてなかったし。自慢話聞いて、何が楽しいの?
「そうだった!しばらく泊めて」
「無理。他当たって」
僕は今、一人暮らしをしているわけじゃない。僕、一人で住んでるわけじゃないのにしばらくも一日も泊めてあげられない。
僕、一人暮らしの時だって泊めたくなんか無いのに。
「何それ?陽音の癖に、僕に逆らうの?」
そう言って、詰め寄ってきた春陽から庇うように的場君に抱きしめられる。
「逆らうってか、無理なものは無理だから」
「お前を、何で俺達の家に招かなきゃ何ねーんだよ」
突然、割り込んできた的場君に、驚いたような顔をする春陽。
「何、それ?一緒に暮らしてるって言うの?αの彼と?βで出来損ないのお前が?」
その言葉に、周りからは、あーあ、と呆れたような声が上がった。
「あの子、王様の逆鱗に触れちゃった」
「馬鹿な子。この状況を見ても理解しないなんて」
クスクスとした嘲笑と共に囁かれる言葉に、僕はため息を吐いた。
逆鱗に触れた、その言葉のとおり的場君の機嫌は急降下。大抵、機嫌悪くても僕と一緒に話をしていたりすると、直るんだけど、コレは長くこの状態が続きそうだ。と他人事のように考えていた。
「お前、頭だけじゃなくて鼻も悪いんだな」
だから、その程度のΩなんだよ、と馬鹿にしたように的場君は笑った。αほどじゃないが、Ωだってフェロモンの匂いを感じ取ることが出来る。
真っ赤になって、どういうこと!?とわめき立てる春陽に面倒になったのか、クルッと僕の体を的場君のほうへ向けると、僕の項を広げてみせる。
「ボンドバイト。俺と、陽音は番なんだよ。お前ごとき、底辺のΩが俺の番をどうこう言ってんじゃねぇ」
胸糞悪い。と的場君は僕の腕を引っ張ってこの場から離れる。春陽の進行は周りの人たちが止めてくれて、追いかけられることは無かった。
「あー、何だアイツ!お前の兄だって言うから一応穏便に済ませてやろうと思ってたのに」
穏便?何処が?といいたくなったが、ココでいえばきっともっと愚痴を聞くことになる。それは、それで面倒くさい。まぁ、でも普段に比べれば穏便なほうだろう。
僕を馬鹿にしていた生徒達は、一発は的場君の拳を貰ったみたいだから。
「生理的に受付ねぇ」
「それは僕も同感だよ」
同じ場所で育っても、かけられた愛情も何もかもが違う。そんな僕と、春陽は双子なのに全然似てないし、考え方もまるで違う。外見すら似てないんだから、もうただの他人と変わらない。
「皆に、後でお礼言わないとね」
そうだな、と的場君が返してきて、的場君は僕の首筋に顔を埋めた。
「・・・帰るか」
授業を受ける気分ではなくなってしまったので、僕も頷いて二人で帰路に着いた。
後で聞いた話だけど、春陽は誰かが連絡して、来た警備員に連れられて大学を出されたらしい。
まぁ、自業自得って奴で。
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