君のために出来ること


君のために出来ること

紫原→オメガ雄
欠陥のあるオメガ。福井が運命であることは解かっていた。

福井→アルファ雄
オメガ・ベータに間違われやすい、アルファ。







陽泉に入ってから、直ぐに福井がアルファであることに紫原は気がついていた。
一目見て解かった。自分の番と言うことは。
でも、それを福井に伝える気は、紫原にはサラサラ無かった。

「何だ、この匂い」

部室に入ってきた福井が言う。
何の事だとベータの部員は首を傾げる。

「・・・紫原、お前か?」

甘い、お菓子のようなにおいがする、と福井が言えばそうかも、と紫原は振り向いた。
その腕の中には、大量のお菓子の山。

「・・・紫原。いつも言ってるだろうが!!部室で菓子食うな!!」

えぇー?と言う紫原からお菓子を取り上げると、福井は部室に居たバスケ部をキッと睨む。

「お前らも着替えに何時までかかってんだ!さっさと校庭走って来い!!」

お前も行け!と福井の体のどこに紫原を動かせる力があったのか解からないが、紫原を福井は蹴りだした。










運命である福井の命令に、体が逆らえない。
普通のただのアルファの命令なんて無視できるのに、福井の言葉だけは無視できなかった。
コレが、支配されるオメガの性か、何てぼんやりと空を見つめお菓子を咥えたまま、紫原は思った。

「何してんだ、こんな所で」

そう言って、座っていた紫原を上から覗き込んでくる福井。

「あー、福ちんじゃん。どーしたの?」
「お前がどうしたんだよ?授業サボってこんな所にいるなんて」

そう言われて、ハッとした。そう言えば朝から授業に出てないことに紫原は気がついたからだ。

「お前、探されてたぞ?」
「それで、福ちんが迎えにきてくれたの?」
「いや、探してるの見かけたから、お前ココにいるんじゃないかって思って見に来た」

へぇ?と紫原は大して興味も無いように答える。
その様子に仕方ないな、と福井は紫原へ手を差し伸べる。

「一緒に戻るぞ」
「いーよ、俺。このままサボるし」

ダメだ、と言って福井は無理やり腕を掴むとそのまま梃子の原理を利用して紫原の腰を上げた。

「ほら、行くぞ」

しかたねーから一緒に謝ってやる、と言う福井に連れられ、校舎の中に戻った。









ようやくくっ付いて、WCが終わった後の福紫。


「ねぇ、福ちん」
「何だ?」

ごろごろと福井の部屋で、紫原にしてみたら少し小さいベッドで横になる。

「福ちんは、欠陥品のオメガってどう思う?」
「はぁ?」

行き成りなんだよ、と紫原に向き直った福井の顔には眉間に皺が刻まれていた。

「俺さぁ、欠陥品なんだよねぇ」
「・・・だから?」
「オメガの性器・・・子宮がさ、育ってないんだって」

そう言う紫原。何でもないような声に聞こえるが、その実、顔は凄く悔しそうに歪んでいた。

「体に栄養が回って、子宮だけ子供の頃となんら変わってないって、中学のとき言われた」

福井は、紫原の言葉をさえぎらず、そのまま言いたいだけ言わせていた。

「だから、俺子供産めるかどうかもわかんねーし、ヒートも来るかどうかわかんねーの」

だからね、と紫原は福井を見つめた。

「俺は、福ちんと一緒にいられない」

そこまで、黙って聞いていた福井は、紫原に近づくとその顔を伝う涙をぬぐった。

「ばーか、お前は本当に馬鹿だなぁ」

福井は、涙をぬぐいながら馬鹿だ馬鹿だと紫原に呟き続けた。

「お前は何もわかってねぇ。子供が産めないから?ヒートが来ないから?だからどうした。俺がお前を嫌いになるとでも?んなわけねーだろ。お前を手放す気なんて更々ねぇよ」
「でも、俺は・・・」
「うるせぇな。俺の幸せは俺が決めるんだよ。俺の幸せはお前と未来を歩くこと。お前にだってそれは否定させねぇぞ、敦」

その言葉に、紫原は再び静かに泣き出した。



福ちんがわからない困ったぞ・・・!!



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