愛おしいと思った日
敵わないから、愛しいと思った
泣きそうになるほど、その姿が綺麗だと思った
けれど、一度としてこちらを向いたことは無くて、
愛されたいと願っても、願う分だけ遠ざかって、
誰の瞳にも入らず、唯朽ちていくだけだと思った。
誰かの心に、居座ることも出来ないで、
手を伸ばすことも出来なかった。
沈んでいく心に、痛みと共に届いた光。
運命だと思った。
好きになって、迷惑をかけてはいけない、
好きになっても、虚しいだけ、
そう思っても、心は止められなくて急速に惹かれた。
どんな事をしても、どんな事を言っても、
怒って、でも最後には笑ってくれた。
それだけで、十分だと思った。
そう、思ってた。
「黄瀬!!」
突然の痛みに、ハッ、と覚醒した。
叫んで飛んで来た蹴りを受け、イッテー!と声を上げる。
「何ボーっとしてやがる?集中しろ!」
反射的に、すんまっせん!と返す中、そう言えば、と周りを見ると、練習中だったことを思い出した。
「・・・何考えてるんだ、黄瀬?」
黄瀬は、その言葉にドキッとした。それを表に出すことはしないが。
「何でも無いッスよ」
「黄瀬」
名前を呼ばれただけ、それだけなのに、責められているような気がして、思わず顔をそらしてしまう。
「ただ・・・」
「ただ、何だよ?」
言って良いものか、どうなのか、迷った末に、ボソボソと話す。
「・・・だなって」
「何?きこえねぇよ」
バスケットボールの音がひしめく中、黄瀬の放った声は酷く小さく、笠松に届かない。
「だから、俺は森山先輩じゃないけど!先輩と会えたのは運命だなって・・・」
その瞬間、体育館が静けさに包まれた。
誰も声を発しない中、笠松がようやく飲み込んだ言葉に、はぁ?と眉を寄せた。
「何言ってんだお前は」
「だだだ、だって、俺本当に海常に来て良かったって思ってるッス!それで、先輩に会えた俺って幸せだなって・・・」
だから、と言い募ろうとした黄瀬の唇を笠松は両手で塞ぐ。
「ばっ、おまっ、落ち着け」
だって、と言おうとして、しょぼんと黄瀬は尻尾を垂らした犬のようにうなだれる。
「大体、お前バカか?」
「なっ、何スかいきなり!?」
「俺は、中学のお前を見たときから運命感じてたけど?」
そんな、笠松の告白に、黄瀬の顔は真っ赤に染まっていく。
「一緒にバスケしてーって思ったし、キセキの中でお前しか選べなかった」
そう言って、笠松は黄瀬の頭を撫でる。
「まぁ、実際に会ったらクソ生意気なガキだったけどな」
「そんときの事はもう忘れてください!!」
そう言うと、笠松は無理だな、と笑う。
その見る人が見れば悪どい笑顔を見て、黄瀬は何故か、幸せだなぁと感じた。
おまけ
【その後の笠松さん】
「やばい、俺の黄瀬がやばい」
「勝手にお前のものにするなー」
「いやだって、アイツ俺と出会ったこと運命って、可愛いだろ」
「それは認める。が、俺じゃないけどってどういう意味だ?」
「お前がいつも運命って言ってるせいだろ」
「orz」
「笠松ー、黄瀬がわんこ宜しく門の所で待ってるぞー」
「おー、今行く」
アイツの幸せを、今だけで終わらせるようなマネはしねーよ。
エンド!!
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