君が好きだと告げることなく
※注意※
・死ネタです!気を付けてください死ネタです!
・全体的に暗いです
・タグには黒大と付けましたが、ほとんどそんな描写はない
・オメガバースの設定を使っておりますが、オリジナルの設定も多々入ってます
・バッドエンドです
・誰も報われない
・どこからグロと言って良いのか分からないの。少しだけ、ほんの少しだけグロい(??)
黒尾鉄朗と言う人物は、αにしては優しすぎるぐらい、優しい男だった・・・。
黒尾が初めて運命の番に会ったのは、烏野での練習試合の時だった。
にこり、と笑って握手した瞬間に解った。澤村大地、烏野の主将が、自分の番だと。
どうやって、落としたら良いだろう?自分たちの間には宮城と東京、距離という障害がある、という事をぼんやりと考えて、その時はお互いの連絡先を交換する事だけで、東京に帰った。
何だかんだとありつつ、お互いの距離は縮まったと思う。いや、縮まったからこそ、澤村の衝撃的な告白を聞いた。
“俺、好きな奴がいるんだ。でも、そいつはαじゃなくてね”
そう言った澤村に、何と返していいのか解らなかった。動揺はしたけれど、きっと表に出すことは無かったと思う。
運命の番、だからこそ欲しい、と素直に思った。運命だからこそ、自分以外を好きになる澤村を許せない、とも思った。でも、それ以上に運命だからこそ、幸せにしたい。幸せになってほしいとも思った。どうすればいいか、解らなかった。
だから、馬鹿な提案をした。
“俺と番になるか?”
と、大学の卒業時に冗談混じりのように話した。澤村は、驚いた顔をして駄目だ、そんなことはできない、と言ったが、
“俺と番になれば、発情期のフェロモンは俺にしか効かない。お前は宮城に帰る訳だし、俺が物理的に離れてれば俺がそれに当てられる事もないだろ?俺も、お前と番になれば、好きな奴以外に惑わされたりしねぇしな”
と、少しの嘘を紛れ込ませて、告げれば、澤村は考えた末に首を縦に振った。本当は、別に好きな奴なんていない。澤村だけが好きだった。けれど、それが叶わないなら、せめて感じた運命だけでも、他に取られる前に手に入れてしまいたかったから。
そして、卒業式の後、黒尾は澤村とセックスして、うなじを噛んだ。その後、一切澤村とは合わない事を約束して。
噛んだ瞬間、今まで不安定だった関係という糸が、きつく、太く結ばれたのを、感じて涙が溢れそうになった。
その、数カ月後。黒尾鉄朗、と言う人物は会社の人事異動という名目に合わせて、ひっそりと日本から姿を消した。
日本にいる面々がそれを知ったのは、夜久が黒尾に連絡を取ろうとしてその携帯が繋がらなかった、と言う事が始まりだ。ラインを流しても、反応がない。メールを送っても、あて先不明で戻ってくる。電話をすれば無機質に流れる、“お掛けになった電話は〜”から始まるアナウンスしか流れない。
研磨が、黒尾の両親に聞き、やっと黒尾が日本にいない事がわかった。
黒尾の両親にはちゃんと、海外に転勤になった事は伝わっているらしい。が、しかし何処の国にいるのかは解らなかった。転勤で海外に行くことになった。何処に行くかは決まってないけど、手紙送るよ、と言われていたらしい。その証拠に、エアメールが届いていたのを見た。
けれど差出人の住所は不明。つぶれて滲んだ細かい単語で、その郵便物が何処から出されたものかもわからない。
それに、誰にも言わずひっそりと日本を出ていく黒尾だ。それが読めたとして、本当にその周辺に住んでるのかも怪しい。
そうなってからは、全くと言って黒尾の足取りをつかめる、進展などなかった。けれど、澤村にはわかった。黒尾がどこかの国できちんと生きている事が。なんとなくだが、そういう気がするのだ。番、となったからだろうか?詳しい事はわからなくても、生きている、元気だという事は感じ取れる。番とは、そう言ったものなのだろう、と澤村は思う。
黒尾に会いたいと、発情期の時には特に思う。けれど、そうなる事も番となる前に覚悟はできていた。
そういう時は、黒尾がどの辺にいるのか、とぼんやりとしながら解る。きっと、無意識のうちに体が求めているんだと思う。
高校時代からの友人で、ライバルでもあった音駒のメンバーが必死になって黒尾を捜しているのは解っている。
きっと、澤村なら黒尾の場所を突き止める事が出来る。けれど、それに協力は出来なかった。きっと、番として惹かれているのは自分だけではない。黒尾も、同じだ。それを、我慢してまで距離をとってくれた。そんな黒尾の好意を踏み躙るような真似は出来ない。
だから、黒尾がくれたチャンスをきちんと生かしていきたいと、そう澤村は願った。
そして、黒尾が見つからないまま数年がたった。
黒尾は今までの会社を辞めて、とある小さな村で自宅で出来る仕事をしていた。
“クロオ!!今日は暇なのか!?”
と、近所の子供たちが、散歩をしに出てきた黒尾のそばに集まる。
そんな彼らの頭をなでてやりながら、息抜きだよ、と笑った。
遊びに誘われたが、それをやり過ごして、ひょうひょうとした態度で散歩と称した道を行く。
森と畑に囲まれたこの地区は、陸の孤島かという位に隣の町との距離が遠い。
森を少し進むと、少し開けた湖みたいな場所がある。ただし、小さいので湖とも言い難いが。
そこの桟橋にすすみ、ぼんやりと遠くを眺める。それから、どれくらいの時間が経っただろうか?
後ろに、会いたくて会いたくてたまらなかった気配がする。
「・・・もう、二度と会う事は無いって思ってましたけど?」
「奇遇だな、俺もだ」
そう、困ったように肩をすくめるようなそんな、気配を感じた。
「何しに来たか知らねぇけど、俺が背を向けてる内にさっさと帰れよ」
お前の居場所はここじゃねぇだろ、と黒尾は言う。
振り向いてしまえば、その姿を捉えてしまえば、目を合わせてしまえば、何をしでかすか、自分でも解らない。
それほどまでに、飢えていた。
番、澤村大地と言う存在に。
だから、帰れといった。その言葉に、黒尾には見えてないはずなのに首を振った。
「帰れない。今日はお前に、お願いしに来たんだ」
帰らない、と言った澤村は一歩、一歩と黒尾に近づく。
そして、黒尾の真後ろに立つと頭を下げて言う。
「番の関係を、解消してくれ」
と。番の関係の解消、その言葉に黒尾は驚く。Ωである澤村が知るはずもない事だからだ。番の解消ということができる、と言う事など。
「・・・番の解消?何それ?」
一応、とぼけて見せるけど、澤村は頭をあげようとはしない。
「西谷から・・・、烏野のリベロだった奴がαなんだが、そいつから聞いた。俺が負うリスクについても聞いた。けど、これ以上お前をつなぎ止めて置くことも出来ないから」
そう言った澤村は、黒尾が負うリスクについては何も、聞いていないみたいだった。
「俺は、別にこのままでいいけど?」
「けど、それじゃあお前はこのままここにいるつもりか?一生、日本には帰らないつもりか?」
その問いに、黒尾は答えなかった。
それに澤村はカッとなって黒尾の肩を振り向かせる。
「お前が、俺のせいで帰れないというなら番を解消してくれ!日本で、お前の行方を、安否を心配している奴が、音駒のみんながいるんだ・・・」
そんな澤村の姿を、久しぶりの姿を見て、黒尾はため息を吐いて、諦めたように、悲しそうに良いよ、と呟いた。
「なぁ、澤村。一つだけ聞かせてくれ」
「何だ?」
「お前は、好きな奴と上手くいったのか?」
その問いに、少ししてから澤村は照れたように笑った。それが、答えだと黒尾は思った。
その湖から黒尾の家に戻り、平時に番の喉元を噛む事で、番を解消した。
「二度目の、サヨナラだな」
少しだけ、間を空けてから黒尾はあぁ、と呟いた。
玄関で、澤村を見送る。これが、きっと最後の、本当に最後になる会話だった。
「澤村、俺は・・・」
「・・・黒尾?」
家を出ようとした澤村に声をかけた、けど、言葉が出てこなくて・・・。
「・・・いや、何でもない。気を付けて帰れよ」
「あぁ、お前も元気で」
それに、手を上げるだけで返事をして、タクシーに乗り込んだ澤村を見送ってから玄関を閉めてズルズルと座り込んだ黒尾はため息をそっと、そっと吐いた。
「・・・あいしていたよ」
さようなら、さわむらだいち
その数カ月後、海を越えて黒尾は帰ってくる。
小さな、小さな箱に白い、欠片となって。
end
ちょっとしたオリジナル設定
番になる方法→セックスの時に、Ωの項をαが噛む。
なら、解消の方法は逆かなぁ?と、勝手に想像。
番を解消する方法→平時に、Ωの喉をαが噛む。
にしました。平時に、番になる時に噛んだ同じ場所をαが噛むって言うのもありかと思いましたが、こっちにしました。
番は解消する事が出来ないとされています。
→αとΩの番が解消できるというのは、情報規制されていて、αだけが知りえる情報。(αのみを集めた授業で講習があったり)
番の解消をすると、αの一部が欠損します。それは内臓であったり片腕であったり、指であったり、それはどこかわかりません。番と言う絆を切るために、αが払う代償として一部を持って行かれます。
そのために、αにしか伝えられない。αも完全であるはずの自分の体の欠損を許す事が出来ないため、殆どの者が番の解消はしない。から、その事実自体が、あまり伝わらない。
普通の番であれば、命にかかわらない場所を一か所。
運命の番であれば、命にかかわる場所を含めて数か所持って行かれます。
西谷をαとして出しましたが、彼も澤村も黒尾が運命だとは思って無かったと、妄想してます。
海外で亡くなった方が、火葬されてから飛行機か船に乗って帰ってくる事が出来るのかは疑問ですが、生前の黒尾さんの意志として、火葬されてから帰ってきた、と言う、設定だったりします。(書かなきゃわからない)
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