澤黒女体化で小話を1
―――澤村ぁ!
この言葉、いうなれば彼の名字だ、が、この大学で登場する回数は多い。
もちろん、普通の友達が呼ぶと言うのもあるだろう。しかし、一人の女性から発せられるのが一番多い。
事あるごとに、見かけるたびに、廊下の端から端に居たって、見つかれば叫ばれる。
「なぁ、澤村」
何だ?と、澤村は友達の方を向く。
「お前ら、付き合ってんのか?」
この質問を、何度されただろうか?と、またか・・・、と澤村は頭を抱えたくなった。
付き合って無い、と返せば、うっそ!?と驚かれる。
「なーに話してんの?」
廊下の向い側に居たはずの彼女は、いつの間にか澤村の隣に来て腕をとり、その腕に胸を押しつけて、ニシシっ、と笑っている。
軽く、澤村はため息を吐いた。
「お前のせいでまた誤解を生んだぞ、黒尾」
えっ、何が?と、黒尾は笑ったまま首をかしげる。絶対狙ってやってるでしょこれ。と、澤村はゴツム、と女子とか関係なしに黒尾の脳天を殴る。
「いった!!何すんだよ、澤村」
「遊んでんのが悪いんでしょ」
まったく、と澤村はそのまま教室に足を進める。その姿にすかさず黒尾は、あっ、待て!と、澤村の隣に寄り添う。
仕方がないな、と半分あきらめているような澤村は、黒尾の好きにさせている。
「おい、何してるんだ?置いてくぞ?」
「あっ、待てこのヤロー」
声をかけられた事によって、ハッとしてその背を追った。
しかし、まぁ、その後ろ姿と言えば、わがままな彼女とそれを受け入れている彼氏の図。所謂、ナチュラルカップルとでもいうのか。考えた末に、空笑いしか出てこなかった。
「あっ・・・」
教室の異動で外を歩いている時、少し強めの風が吹いて、黒尾の長い髪が風に煽られ、その白いうなじがあらわになった。そこには・・・。
「えっ?」
それを見つけ、よーく見ようとした途端に、澤村の手によって遮られてしまった。
しぃ、と人差し指を笑いながら、その口に立てる澤村。口パクで、内緒な?と言われ、再びから笑いしかない。
と言うより、内緒って誰に?黒尾に?皆に?今度こそ、思考停止して俺は何も見ていなかったと先ほどの光景を忘れようとした。
「んー、何?なんかあった?」
「何でもない。ほら、早く行かないと遅れるぞ」
と、再び歩き出す。付き合っているのかと聞かれるような行動を起こす黒尾と、そうして意地の悪い所にしるしを残す澤村と、どちらが腹黒いのか。
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