猫熊な恋人


パンダ=熊猫

横澤さんをパンダにたとえた話。



みさきち参戦



「編集長!」

「ん、高橋くんどうかした?」

「あっはい、ここの所うかがいたいのですが…」


数枚の書類を手に、編集長の話を聞く俺。

編集長の話は、色んな事を分かりやすく教えてくれるから好きだ。

ふと、編集長の顔を見上げる。やっぱり、ウサギさんと同じでキラキラしてるなぁ……ん!?


「へっ、編集長…その首のものは…」

「ん、首?」


もしや…っ!?

と、首の赤くなっているところを指せば、編集長は首をかしげた。


自分では見れないようで、誰かに鏡を借りて見た編集長はぷっ、と笑いだす。


「うわっ、ククッ、こんなのいつの間に付けられたんだ?」


良く見れば、噛み跡さえ残っているし、編集長は一体どんな人と何を付き合っているのか不思議に思う。


「この間は腕にあったしなぁ…ほんと、可愛い事してくれんじゃん」

「あのぉ、つかぬことお伺いしてもよろしいのでしょうか?」


日本語が変?気にしちゃいけない。

なに?と聞き返してくる編集長は超笑顔だ。


「編集長って恋人……」

「あぁ、いるよ。……可愛い、パンダみたいのが」


パンダ!?

意味が解らず、唖然としているうちに編集長は誰かに呼ばれて行ってしまった。


帰りがけ、俺はあり得ない人たちにエレベーターの中で会う。

きらきらした…ウサギさんみたいな人と、癒し系の小野寺さんと…鈴木さんみたいな人。


「お、お疲れ様です」

「あっ、高橋君。お疲れ様、今日はどうだった?」

「あっ、はい。疲れました、でも勉強になります」

「そう、よかった」

「おい、小野寺。こいつ誰?」

「来年、丸川に入社する、高橋美咲君です。今、丸川でバイトしてるんですよ」

「ふ〜ん?あっそう」

「あっそう、って高野さん!!」


自分から聞いておいて、何なんだこの人の態度……。


「俺は、エメラルド編集の高野。こっちの熊見たいのが」

「熊は余計だ。営業の横澤。来年からか、どこに配属されるのか決まってるのか?」

「いえ、まだ正確には…って、熊?」

「営業の暴れ熊。気をつけろよ、こいつの気迫に押されたら売れる本も部数足りなくなっちまう」

「おい、政宗」


ぶすっとした横澤さんの顔を見て、高野さんが笑ってる。

その間に、俺は小野寺さんを捕まえる。


「ねぇ、小野寺さん……見えるところにキスマークとかって、普通怒りません?」

「なっ……何言ってるのかな、高橋君」


一瞬、小野寺さんが首筋を抑えたけど、俺には解らなかった。

そう、あの編集長のアレが頭の中をぐるぐるして……。


「いや、今日編集長の首筋にキスマークあって…そうしたら、噛み跡まで見つかってしまって…」

「編集長って、桐嶋さん?」


その、桐嶋さんと言う言葉に、ぴくっと横澤さんが反応したことを俺は知らない。


「そうです!普通、怒るかなって思ったら、『可愛い事してくれんじゃん』って!!あの時、あぁ、この人は大人だなって感じたんですけど、それ以上に、その跡付けた人が愛されてるんだなって思いました!!」


そう、その時編集長は、優しい顔で、慈愛に満ちて笑ってたんだ。


「俺には出来ない芸当だな……って、桐嶋さん恋人いたんだ?」


結婚指輪をはずしてから、桐嶋さんはモテてはいたけど、恋人がいるってことは聞いたことが無かった。


「いるって言ってましたよ、確か…パンダみたいな人?」

「パンダ?」

「はい、パンダっていってました。どういう意味なのかなって、思ったんですけど、聞く暇もなく次に呼ばれて行ってしまったんで聞けなかったんですよね」


そうなんだ、と小野寺さんと話しているとき、後ろでは高野さんが肩を震わせて笑っていた。

横澤さんは、口を押さえて何かを考えてる様子だし。

いったい、パンダとは誰のことなのだろうか?


明日には忘れてしまいそうな問いが、俺の中に渦巻いていた。


END

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