構って下さい


エメ編と横澤さんの御話。









「……わかったよ……あぁ、買って帰る…うん、良い子にして待ってろ」


ピッと通話を切る横澤。

彼は今、誰に電話していたのだろうか?

そう言えば最近、横澤の付き合いが悪くなった気がする。

確かに、横澤をふったのは俺だ。でも、友達に戻れたと思ってる。

けど、それにしたって付き合いが悪すぎる。

週末、誘っても悪いって言って断られるし、アニメ関係の仕事も一段落ついたはずだ。

平日、誘ったところで問題ないはずなのに、横澤は疲れているから、疲れているだろうから、なんて理由を付けて飲みに行くのを断ってくる。

いい加減、俺もストレスが溜まりっぱなしだ。


「横澤!」

「っ!?政宗、か。どうした?」

「お前、いつになったら暇になんの?」

「いや、だから今忙し…」

「嘘つけ!!アニメもサイン会も終って、何が忙しいんだよ!?」

「いや、政宗、落ち着け」

「はぁ!?俺はこれ以上なく落ち着いてんだよ!」

「どこがだ!」

「二人とも、落ち着け」

「「うるさい!」」

「おぉ、やっぱり似てるな」

「って、桐嶋さん!?」

「そ、俺。ってことで高野。横澤借りてくわ」

「ちょっ、まっ、おいっ!話を聞け!!」


あっ、と言う間に桐嶋さんは自然な流れで横澤の腕をとり、引っ張って行ってしまった。

それがまた気に食わない。

横澤を、恋愛感情はなくても気に入ってる俺としては、本当に気に食わない。


「高野さん?あの、原稿チェックしてもらいたいんですけど」


デスクに戻ると、律が声をかけてきた。

いつもよりびくびくしてる。

そりゃそうだろう。いま、俺の機嫌は最悪なのだから。


「……問題無い、これで進めろ。羽鳥」

「はい?」

「校了明け、横澤拉致る。店、予約しておけ」

『は?』


エメ編の皆がこっちを見て、何いってんの?って顔で固まる。

特に律なんかは酷い顔してる。嫉妬とか入り混じってそうなそんな顔。


「いい加減、腹立つんだよ。あいつ、洗いざらい全部吐かせてやる」

「って、なるほど。そう言うこと!俺行く〜」


木佐が乗ってきたことで他のメンバーも考えてるみたいだけど、お前らも巻き込むつもり大だ。


「あぁ、お前ら暇な奴は強制参加な。その日に、横澤に聞きたいこと洗いざらい聞いてやれ」

『りょうかーい』


そして、校了明け……

美濃は用事があるらしく、欠席。それ以外のメンバーは全員そろってる。


「おい、政宗!!」


吠える横澤をひっぱり、羽鳥が予約した店に連れて行くと、もうすでにエメ編はそろっていて、空いた席に横澤を座らせて、その隣に俺は腰を下ろした。


「……これは、いったい何なんだ?」


ヒクヒクと口元を引きつらせている横澤をしり目に、注文してあったのかビールがタイミングよく全員分運ばれてきた。


「あ?校了明けの打ち上げ。兼横澤を拉致る会」

「はぁ!?意味わかんねぇよ!!俺は帰る!!」

「桐嶋さん」


その名前を出すと、ビクッと横澤の体が跳ねた。

俺はそれに、にやり、と笑う。


「明日、あることない事全部吹き込んでやろうか?」

「なっ!!政宗、お前性格悪くなったんじゃないか?」

「元からだ」


横澤を無言で座る様に促すと、ジョッキ片手に乾杯の音頭で飲み始めた。

横澤はその後すぐに、携帯で誰かにメールを打ったみたいだけど。


「ねぇねぇ、横澤さんさ〜、あの水玉フリルのエプロン、どうしたの?」


ゴフッ、っと横澤が木佐の言葉にビールを噴き出した。


「きったねぇなぁ」

「うるせぇ!大体、何でお前がそのこと知ってんだ!?」

「人づてでねぇ…で?どうなの、どうなの?」

「……てめぇ、こそ雪名とはどうなんだよ?なぁ、木佐」


雪名、その人物に首をかしげているのは俺だけじゃないだろう。

木佐だけは、青くなったり赤くなったりしてるが。


「なななっ、何いってんの横澤さん」

「俺はテメェが雪名と一緒に帰ってるところを良く見るんでな。ブックすまりもは、俺の営業先だぞ?忘れたのか?」


そう言われて、木佐は大人しくなった。けど、木佐がこぼした言葉を俺達が拾わないはずがない。


「横澤さん、その件詳しく聞かせて頂いてよろしいでしょうか?」

「羽鳥、テメェ…吉川先生、確かアシスタントの柳瀬と取り合ってるんだっけか?いや、もう終った話なのかもしれないがな」

「……何故?」

「その柳瀬が丸川に来た時にぼやいてたのを聞いた」


缶詰状態になった時、アシスタントで来る柳瀬が横澤の近くをそのことをぼやきながら歩いて行ったのだと言う。

珍しく顔をゆがめた羽鳥は、大人しく引き下がった。


「じゃ、違う質問。お前、付き合ってる人いるのか?」

「……ノーコメント。いい加減にしろよ、政宗」

「はっ、最近お前の付き合い悪いのが悪い」

「ほぅ……だがな、面と向かって好きって言われたことも、まだ付き合えてもいないやつに言われる筋合いはない」

「じゃあ、お前は付き合ってて好きだって言われたこと有るんだな?」

「お前に関係ないだろ!大体、何でそんなこと知りたいんだ」

『横澤(さん)が最近変だから』

「なんだその理由、意味わかんねぇ」

「最近、雰囲気変わったの自分で解ってる!?」

「優しくなったといいますか、声をかけやすくなりましたよ」

「眉間のしわも減りましたし!!」


口々に言われて、横澤もたじたじだ。


「しっ、知るか!」

「それもこれも、桐嶋さんのおかげだよな?」

「……あぁもう、解ったよ!!俺は桐嶋さんと付き合ってる!!これでいいのか!」


面倒くさくなったのか、横澤は叫ぶように認めた。


「ほう、桐嶋さんとね……、どっちが上?」

「はぁ?何でそんなことまで応えなきゃなんね…」

「俺に決まってんだろ?」


座敷の襖があいて、顔を出したのは噂のネタである桐嶋さんだった。


「何で、桐嶋さんがここにいるんですか?」

「うん?恋人を迎えに」

「ちょっ、桐嶋さん!?」

「ほら、帰るぞ」

「まっ、あぁもう!じゃあな、俺は帰る!」

「桐嶋さん、今度は一緒に飲みましょう」

「お前らも、恋人連れてくるならな」

「えぇ、勿論」


俺と桐嶋さんがにやり顔で顔を見合わせると、桐嶋さんはさっさと店の出口へと向かってしまう。

横澤も慌てて追いかけてるけど、どこか表情が青く見えるのは気のせいだろうか?

俺達は、その後も桐嶋さんと横澤を話しのネタにしながら酒を楽しんだ。


end

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