お前、変わったな


「……横澤、お前変わったな」

「はぁ?何言ってんだ、高野」


企画書の直しをエメ編に持っていくと、そう告げられ眉を寄せる。

最近こう言ったことを言われることが多いが、理由が解らない。


「いや、だからなんつーか……エロくなった?」

「意味が解らん。俺は怒ってもいいのか?」

「マジでだって、なぁ?」


そう政宗が、尋ねればエメ編全員が頷き返す。


「な?」

「なじゃねぇよ!どういう意味だって聞いてんだ」

「どういう意味って…」


と口々に話しだす面々。


「最近何か在りましたよね、横澤さん」

「それは思うね。その…顔色が前より明るくなったし」

「それにぃ、雰囲気も明るくなった気がするんだよねぇ」

「よっ、横澤さん、優しくなりましたし!!」


出される言葉に赤面する間もなく、あきれ顔になる。


「時々、キスマークに気が付かないで出社してくるしな」

「は?キスマーク?」

「そうそう、この間なんてぇ、本当に首の真後ろとかぁ」

「ボクは耳の後ろに付けてるの見たよ」

「本当!?何それ、俺しらないー!」


キスマークの話題になってから、きゃっきゃと騒ぎ出す木佐と美濃。

後で覚えてろ……。


「って、本当かそれ」

「俺が嘘ついてどうする?今度、付けて来たら指摘してやるよ」

「要らんっ!」

「まっ、そう言うな。で?お前がエロくなったって、少しは解ったか?」

「解るか!!」


解ってたまるか!!しかも、噂の原因の半分は桐嶋さんのせいじゃないか!!

悶々としていた俺は、周囲が静かに成ったことに気が付けなかった。


「大体、エロいのは俺じゃなくてあの人自体だ!!」

「誰がエロいって?」


後ろから耳元で低く囁かれた声にビクッと体が跳ね、ガクンッと膝の力が抜ける。咄嗟に掴まりを求めた腕は、誰かの腕をつかみ取った。気が付けば、腰を抱えられている。


「〜〜〜っっ!!?」

「どうしたんですか、桐嶋さん」

「いや、こっちに何でかエメ編の企画資料が混ざりこんでたみたいでさ。俺、手が空いてたから届けに来たってわけ」

「それは、編集長自らありがとうございます」


俺が持ってきたのは、比較的訂正の少ない政宗の分。混ざりこんでいたのは、赤字の多い小野寺の分。

たぶん、逸見が資料を運ぶときに誤って一緒に持って行ってしまったのだろう。


「で、横澤。俺に言うことは?」

「…ありがとうございます、桐嶋さん。ご迷惑をおかけしました。これでいいか?さっさと離せ!!」


桐嶋さんに触れている部分が熱い。さっきの声で、俺の顔は真っ赤なのにそれ以上にやばくなってしまう。

会社でそんなことはできない。だから、桐嶋さんに早く離れてもらいたかったのに。


「離していいのか?」


そう、またささやかれ、支えの無くなった俺は、桐嶋さんに掴まっていた手だけを残し、床へ座りこんでしまう。

片方の手で真っ赤に染まった耳を隠すけれど、バレバレだろう。


「おーい、大丈夫かぁ?」

「何それ、横澤さん可愛い」

「桐嶋さんの声は、横澤さんにとって破壊力抜群なんですね」

「横澤さん、大丈夫ですか!?」

「うわぁ、何か新鮮なんだけど」

「横澤ぁ、作家に今のネタ教えてもいいか?」


俺は、消えてしまいたい衝動を起こしながらも、気合いで床から立ち、逃げるようにその場を後にした。

暫く、桐嶋さんとろくに口をきかなかったのは言うまでもない。


END


可愛いの第二段。

桐嶋さん自体をエロいと思っている横澤さんが書きたかった。



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