パパ独占日
あのね、滅多にないんだけどお兄ちゃんが少し変になる日があるの。
【パパ独占日!】
いつも通り帰って来た私は、出迎えてくれたそらちゃんに「ただいま」って言うと、手を洗ってうがいをして、お夕飯の準備を始めたの。
今日のお夕飯は勿論カレー、私の得意料理!
ジャガイモの皮むきを初めて数分…、お兄ちゃんが帰って来た。
「おかえりなさい、お兄ちゃん」
「あぁ、ただいま、ひよ」
玄関に行って、お帰りって言うとお兄ちゃんが頭を撫でてくれた。
けど、その瞳にはいつもの…なんて言うのかな?お兄ちゃんらしさがなかった。
あぁ、また来たのかな?って、そう感じたの。
「今日は何を作ってるんだ?」
「カレーだよ!」
「そっか。俺も手伝うよ」
私は少し、何があったのか気になったけど、私じゃどうにも出来ないと思ったからきかなかった。
こう言うときのお兄ちゃんは、何を聞いても応えてくれないんだよ?
「ただいま〜」
「おかえりなさい、お父さん!」
「ひよ、ただいま」
私の頭をお父さんもやっぱり帰ってきたら撫でてくれる。
疲れて帰ってきてるのに、お父さんはいつも笑ってるの。
だからね、私も笑顔になるんだよ!
「お、おかえり…」
「ただいま、隆史」
お父さんは、お兄ちゃんの事を名前で呼ぶようになったの。私がおじいちゃんおばあちゃんのお家に行ってる間に何かあったの?って聞いても、お兄ちゃんが何も応えてくれないんだよ?
気になるのに…。
けど、今日はそんな問題じゃなくてね、お兄ちゃんがいつもならまっすぐ目を見て離してるはずなのに、お父さんの目を見ようとしてないの。お父さんが何かしたのかな?って思ったけど、でもお父さんも解らないみたい。
だから、やっぱりそう言う日なのかなって。
「隆史?」
「…飯、出来てるぞ」
そう言って、リビングの方、行っちゃった。
それから、お夕飯を三人とそらちゃんで食べたけど、お兄ちゃんの様子が変。
私の話は真面目に聞いてくれるけど、時々お父さんを気にしてるそぶりを見せるの。
私が宿題してる間とか、お兄ちゃんはいつも通り教えてくれていたけど…お風呂に入るためにリビングに戻ると、またお兄ちゃんは変になっちゃった。
だから、私はお兄ちゃんの邪魔をしないように早くお風呂に入って寝ることにします。
お父さんがいるから、大丈夫。お兄ちゃんはただ、甘えたいだけなんだと思うんだ!
だから、今日みたいな日を私は『パパ独占日』って呼んでるの。
あっ、いっけない。パパって呼んじゃった!でも、仕方ないよね?
じゃ、おやすみなさい。
+α
「ひよは寝たか…」
おやすみなさい、との声を聞いてひよの部屋の扉が閉まる。勿論、そら太もひよについて行った。
「隆史、おいで」
ソファーの上で両手を広げて差し出せば、おずおずとその腕の中に何も言わず入ってくる横澤。
「どうした?」
そう、尋ねるものの横澤は首を振るばかりで、その質問に答えようとしない。
けれど、それでも良かった。
桐嶋にとって、頼られているということが何より幸せだったから。
ぎゅうぎゅうと抱きついている内に、横澤は寝てしまう。
それでも、桐嶋は何も言わなかった。ただ、その姿を愛しそうに見守るだけで……。
End
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