恐怖
桐横、横ガチ泣き話が書きたいから出てきたネタです…、何があっても…、((;゚Д゚)オレシラナイ
「なん、だって?」
『だから、ひよの参観日間に合いそうにないんだ、今日が最終校了なの知ってるだろ?』
外回りで、出ていた先で携帯に出ると、桐嶋さんが切羽詰ったように話し出してきた。
何でも、作家が原稿を持って何を思ったか、逃亡を測ったらしい。
あの、かの有名な宇佐美先生じゃあるまいし、やめてほしい。
まぁ、編集の仕事は俺には関係ないけれど、雑誌にその先生の漫画が載らないとなると話は別だ。
その分、店舗に早い段階に話を付けておかなければならない。
店と話をするのは、編集の仕事じゃなく、営業の仕事だから。
『今、親父もお袋も旅行でいないの知ってるだろ?なっ、頼む』
「いや、だから俺には俺の都合ってもんが…」
『お前の上司には話を付けておくから、頼むな!』
「おいっ!ちょ、待て!桐嶋さん!?おい!!」
話をぶった切られてツーツーと、虚しく響く携帯の音。
ひよの参観日に行ったところで、悪い予感しかしない。
どうしたものか、そう考えながらも、足が向くのはひよの学校の方。
俺は、やっぱりこの桐嶋親子には弱いのだ…。
そして、ギリギリになってひよの教室へ飛び込んだ俺。中は保護者で溢れかえっていた。
そんな中、身内でもない俺は肩身が狭かったが、桐嶋さんに言われてここに来てるのだし、堂々としていようと心がけてヒヨを見守ることにした。
その日の授業は、ひよの苦手な算数だったけど、予習を手伝っている介があるのか、ひよは淀むことも間違えることもなく答え、俺のことじゃないのに誇らしかった。
「おにいちゃん!!」
授業が終わり、俺の姿を見つけたひよが駆け寄って来るのを受け止める。
「あぁ、よく出来ていたな、ひよ」
「お兄ちゃんがいつも教えてくれるからだよ!」
俺が頭をなでると、ひよは少し照れながら、それでも誇らしげに俺に話す。
その姿は、何より可愛らしかった。癒される、そう言っても良い。
「あれ?日和ちゃん?珍しいね、お父さんは?」
そんな中、声をかけてきた男性が一人。
その人の近くには、ひよと同じ学年だろう男の子がしっかりと手をつながれそこに居た。
「こん、にちは、日向さん」
その人が現れた途端、ひよは俺の後ろに隠れるようにして、ぼそぼそと話す。
珍しいと思った。ひよは何分人見知りはしないたちだと思う。
そして、嫌いでもこうあからさまにすることは、なかったはずだ。
そんな反応が珍しくて、顔を上げれば何か冷たいものが背筋を張ったようにゾクリとした。
「今日は忙しいの。私ももう、帰らなきゃ。お兄ちゃん、いこっ?」
俺の手をぐいぐい引っ張り学校の玄関先へ向かうひよ。
その手は震えていて、顔には少し嫌悪感がにじんでいた。
「ひよ?」
そう、問いかけるも家に帰るまでずっとひよは無言だった。
ただ、そうただ何かに怯えてるようだった。
「ただいま」
「…ただいま」
誰もいなくても、ここには桐嶋さんの奥さんの仏壇が有る。だから、ひよも俺も来た時には「ただいま」というのを忘れない。
家に帰ってきて、ゆっくりしてからもう一度ひよに尋ねる。
「ひよ?何が有ったんだ?」
すると、ひよはおずおずと誰もいないからか、気まずそうに話しだす。
「あの、日向さんって人、パパの幼馴染なの」
ポツリ、と話しだされた内容に俺は少なからず驚く。
何せ、桐嶋さんの幼馴染だと言うのに、このひよの反応だからだ。
「けど、私ね、初めてあった時から苦手だった。日向さんは怖い」
あの目が怖い、そう言って震えるひよの体を抱きしめる。
「パパは、ひよのパパなのに、まるでひよからもママからも取ろうとしてるみたいで、嫌い」
ひよが更に、はっきりとした拒絶を示したことで、更に驚く羽目になる。
こんな、ひよの姿は珍しい。
「ママが居なくなって、余計に怖くて…、それで、今日はお兄ちゃんで安心できたのに…何で」
俺のシャツを握り締めながら泣き始めるひよ。
その姿を見て、あの男性を思い出し、また背筋をゾクリと戦慄かせた。
結局、その後ひよに何も言うことが出来なくて、ただ慰めていた。
それは、ひよが眠るまで続いて、俺はひよをベッドへ寝かせると、一人夕飯作りにキッチンへと立った。
言い表せれないような、恐怖と不安に襲われながら。
定時ごろ、桐嶋さんがガチャリ、と鍵を開けて家に帰って来た。
その姿を見て、知らず知らずのうちに、ほっと一息付いていた。
「あれ?ひよは?」
「……寝てる」
「は?」
泣き疲れて寝てるなんて、言われたくないだろうし、知られたくないはずだ。
だから、俺はあえて伏せて真実を伝える。
「疲れたんだろ?今日は良く頑張ってたし」
「そうか…ありがとうな、隆史」
「…べっ、別に礼を言われるようなことしてねぇよ」
照れんなよ、そんな声を後ろで聞きながら、俺は出来あがった料理を盛り付けて行った。
その間にひよは起きだして、俺を手伝ってくれた。
ひよの顔を見て、何が有ったか悟っただろうに、桐嶋さんは何もひよには聞かなかった。
それでも、今日あったことや授業参観について、ひよの口から楽しそうに引き出している。
そして、またひよを寝かしつけると、俺を真剣なまなざしの桐嶋さんが射抜いた。
「寝室行って話すか」
そうして、取られた腕。
リビングで話すより、寝室で話をした方が確実にひよには聞こえない。
俺は、桐嶋さんの考えも伝わっていたので、黙ってそれに従った。
「で?何が有った?」
「…今日、授業参観日だっただろ?」
「あぁ…、お前が行ったことで何か言われたか?」
それはない、と俺は首を振る。そして、どう切り出したものか思案しかねて、あー、とかうー、とかうなってみるけど、効果はいま一つで良い案も浮かんでこない。
こうなったら、下手な手を打つよりは、素直に打ち明けた方が良いと、俺は意を決して口を開く。
「その、今日アンタの幼馴染って人にあった」
「あぁ、もしかして日向?」
「あぁ」
「そっか、それでか。なるほど、状況は読めた」
俺は、一瞬ぽかんっと桐嶋さんを見つめた。
何せ、俺は全部を話してはいない。
なら、ひよはこのことを全部桐嶋さんに話していたのだろうか?
「そんな顔すんなよ、襲いたくなるだろ?」
「ばっ!どんな顔だよ!?」
俺の様子をからかって楽しんでいる桐嶋さん。せっかく、真剣な話をしていたと言うのに…。
「悪い悪い。何で解ったかって、疑問もった困った顔してたからな。可愛くて…」
「それはどうでもいいんだよ!」
「ハイハイ。はっきり言えば、ひよは日向が嫌いだろう?けど、それは俺がひよから聞いたわけじゃない」
ひよに聞いたわけじゃない。それなら、ひよのあの行動はいつものことなのだろう。
「いつも、会うたびに変な顔してるからなぁ。人見知りしないのに、そうなればもう嫌いしか思い浮かばないだろう?好き嫌いもそんなにしないけど、あいつだけはだめらしいな」
「……」
俺は、それにどう答えていいのか分からない。
けど、ひよの気持ちはわかる。あの目で見られたら、怖い。
一瞬にして思い出してしまったあの顔、あの瞳に、俺は身震いした。
「隆史?どうした、大丈夫か?」
「…あぁ、大丈夫、だ」
「お前…、なんて声してるか解ってるか今」
必死に震えないように出した声。その声がどんなものかなんて、俺にしたら感じ取ることなんてできなかった。
「泣きそうな…不安そうな声出しやがって」
そう言って、笑った桐嶋さんは俺の頭を自らの胸元へ引き寄せた。
「ほらっ、泣きたいなら泣いちまえ。我慢してんな、俺に全部ぶちまけろ」
そう言って俺の髪をすいてくる桐嶋さんの手。
その手の暖かさに、俺は感情が溢れるのを抑えきれず、嗚咽とともに吐き出した。
「あの人は、怖い」
「絡み取られるような、目が怖い」
「俺を否定するような、目が…」
「俺を探るような、目が…」
俺がぽつりぽつりと、嗚咽の合間に漏らす声に、ただ桐嶋さんは抱きしめてくれて、うん、うん、と相槌を打っていてくれた。
その後の記憶はない。
けど、どこかすっきりとした気持ちになったのは事実だった。
End
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