非公式CP


非公式CP

雪横


雪名は翔太さんに会ってません。横澤さんはやけ酒してないし、桐嶋さんにも会ってません。

舞台は、横澤さんがふられた一日後で、横澤さんは色々考えてあまり眠れなかったパターン。


「あれ?横澤さん、今日は何か元気ないし顔色悪いっスよ?どうかしたんですか?」

「雪名か。……いや、何でもない」

「何でもないって顔してませんよ、俺でよかったら話し聞きます」

「お前に聞いてもらえる話じゃない……それに、仕事中だろ」

「もうすぐ終わるんで。横澤さんはこんな時間にここに居るってことは、この後直帰ですよね?少し待っててください」

「は?いや、だから、ちょっと待て。話を聞け、おい、雪名!?」


雪名は、横澤の話を聞いているのかいないのか……たぶん、聞いてはいるんだけど、聞く気が無いのだろう。さぁ、後少しだと言わんばかりに女の子相手に本を売るため、職場へと戻って行く。

横澤はその様子を、ただ茫然としながら見送った。

しかし、横澤の性格から、無理やり押し付けられた都合でも断ることなんてできない。

帰ることもできずに店の前で待っていると、バイト終わりだろう雪名が出てきた。


「あっ、横澤さん。じゃあ行きましょうか」

「おいっ!お前、俺がいなかったらどうするつもりだったんだ?」

「えっ?横澤さんは居ますよ、ちゃんと。だって、そう言う人ですから」

「は?」

「現に今、こうしてここに居るでしょう?」


キラキラな王子スマイルでほほ笑まれ、横澤は後ずさる。

普段、見慣れているだけあって動じはしないが、何か嫌な予感がするから。


「今日は寒いし、後は店で話しましょう?」


ねっ?と横澤の手を取って、有無を言わさず歩き出す雪名。

横澤は、つられるがまま訳も解らず歩いた。

その間発した横澤の言葉は、雪名に全てスルーされた。

ついたのは、少し脇道にそれた最近の若者に人気のありそうな内装の店。

それでも、一つ一つの席が個室になっていて周りの煩わしさは感じられない。


「ここなら、横澤さんの話も聞けるんじゃないかと思って」


ついでにお酒も飲めるし。と言う雪名の本当が解らない。

まあ、明日は休みだし、飲んで支障をきたす事は無いのだが、横澤にとって、“何で”、“今”、雪名と飲まなければならないのか、それが不思議でしょうがなかった。はたして、雪名はきちんと横澤の話を聞いていたのだろうか?

雪名は、注文を手早く済ませると横澤に向き直った。


「あっ、勝手に注文しちゃったんですけど、横澤さんビールでよかったっスか?」

「あっ、あぁ、構わない」


気まずい、そう思うしかない。本当に何で、こうなった?

すぐに、飲み物だけ運ばれてきて、軽く乾杯をした後雪名が話し出す。


「で、何が有ったんです?」

「いや、いい。聞かなくていい。まず第一に話すなんて、言ってない」

「えぇ〜、何でですか!?俺じゃ、頼りになりません?話す価値も無いっスか?」

「い、いや、そうじゃない。お前、いや、普通に受け入れられる問題じゃないからだ」


そう、政宗にふられた。それは事実だが、一般的に考えて横澤達は男同士。

それを他人に話せるほど、拒絶されないほど世界は甘くない。


「はぁ?何すかそれ?いいから、言ってくださいよ。俺、大抵何でも大丈夫ですから」


どうしても引かない雪名に、そっと溜息をつくと、肝心の相手には触れずに話す事にした。


「……笑うなよ?」

「笑いませんよ!」

「…俺は、昨日…初恋の相手に失恋したんだ」

「横澤さんが、失恋?」


雪名の言葉に、言葉なく頷く。そして、気持ちの整理をしてから話し始める。

雪名は黙って横澤の言葉を待っていた。


「…そいつと俺は、友達だった。でも、俺と出会う前にそいつには、とても好きだったやつがいたんだ。いや、今でも好きなのか」


そいつのことが、と自分で言っておいて、まだ辛い。あんな奴に取られたかと思うと、苦しくてしょうがない。

好きとも言えず、政宗を傷つけて放りだしたあんなやつに……


「横澤さん」


不意に延ばされた雪名の手。

その手は、横澤の頬を撫で、目もとの涙をぬぐう。

そうして、ようやく横澤は自分が泣いていることに気が付いた。


「あっ……悪い、こんなみっともない所見せて……」

「そんなっ」


横澤が目元をおしぼりで拭いていると、雪名が頼んだ料理が届く。

失礼します。その声で、運んで来た子が出て行き、雪名が横澤に向かって笑う。


「もういいっスよ、大体わかったんで。じゃあ、飲みましょう?そう言うのは飲んで忘れるのが一番です!」


そうして、雪名に進められるがまま、横澤は酒を煽った。最後の方は、前後不覚で雪名の顔も朧気にしか覚えてない。


次の日、気が付いた横澤は知らない部屋で、寝ていた。


「あっ、目が覚めました?」

「ゆき、な?ここ、は?」


雪名は、キッチンの方から顔をのぞかせると、にこりと笑う。


「体調はどうですか?」

「あぁ、だいじょう…はっ?」


ぶ、と言おうとして違和感に気が付く。起き上がろうとして、普通は痛くならないだろう場所に走る痛み。


「あの、横澤さん?」

「……雪名テメェ、これは一体」

「横澤さんが誘って来たんですよ?俺は寝かせてあげようとして、ベッドに運んだのに行き成りキスなんてしてくるから」

「キス!?俺がか!?」

「はい。だから、俺歯止めが利かなくなっちゃって」


なんてこったと、横澤は頭を抱えた…。

自分に記憶がない以上、本当かどうかは定かではない。でも、横澤には雪名が嘘をつくタイプには思えなくて、より一層頭を抱えた。


「もしかして、覚えてないですか?」

「…あぁ、何一つ、覚えてない。済まない、俺の相手なんて気持ち悪かっただろう?」

「は?何でですか?役得ですよ、俺、横澤さん好きだし」

「…はぁあ!?」

「何でそんなに驚くんスか?心外ですよ、俺だって好きな人じゃないと歯止めが利かなくなったりしませんって」

「はっ、何で俺なんか…」

「何で横澤さんは自分のことを“何か”とか言うんですか?こんなに素敵な人なのに」


ふわっ、と自然に手を延ばされ、身を固くする。反射的に目をつむると、その手は横澤の頬を撫でる。

ゆっくりと目を開くと、雪名は変わらず笑っていてどうしていいのか解らないくなる。


「そんなの……こんな、熊みたいな男…好きになんてなるわけ、ない」

「解らないじゃないですか。現に、俺は横澤さんが好きです。それじゃ、ダメなんですか?」

「ダメって言うか…俺は、言った通り失恋したばかりだし…」

「…じゃあ、ゆっくりと俺に落ちてきてくださいよ、横澤さん。俺、待ってますから」


さっきまでと同じように笑っているのに、どこか優しげな雪名の顔に、横澤の顔はサッと朱がともる。

案外、雪名の中へ横澤が落ちて行く日は早いのかもしれない……。











「あっ、横澤さん!」


ブックスまりもの店長と調度話終わったとき、タイミング良く雪名が現れた。


「あ?何だよ」


少し仏頂面になりながらも、睨み付けるように雪名を見る。

そうでなければ、このキラキラな王子オーラを纏ったお伽噺から出てきたような雪名を直視できない。

馴れた、とは言えこの間の事があったから、尚更。


「今日も、この後直帰ですよね?」

「あぁ、まぁそうだけど」

「俺、もう少しで終わるんです。待ってて下さい」


ねっ、と顔を近付けられ、反射的に顔を反らして頷いた。

頷いてから、ハッとしてももう遅い。

ばっと、雪名を見ればその顔はにっこりと綺麗過ぎる位綺麗に笑っていて、表情筋が引きつる。


「外は寒いんで、中で待ってて下さい」


手を引かれ、裏の休憩室へと連れ込まれる。途中、店長にはちゃんと報告していて、「横澤さんなら、まぁいいよ」と言った返事を貰ってる。

強引と言うか、なんと言うか。

営業してるときは平気なのに、こう、営業から切り替わる時は、何故か雪名に流される。

きっと、この雪名の強引さは、横澤なら断らない、と言うことが前提にあるのだろう。

くそっ、と内心悪態を付きながらもどうしても、雪名相手だと強く出ることが叶わない。根本的に、横澤は雪名に弱いのだ。


「じゃ、ここで待っててください」


すぐ、終わらせてきますんで!

そう言って、雪名は横澤を休憩室に押し込め、にっこり笑って出ていった。


暫くして、ガチャっと言う音がして開いた扉。その音に、反応してふっと顔をあげる。


「あ?」

「は?あんた、誰?」


けれど、そこにいたのは期待していた雪名ではなかった。当たり前だ、書店員は雪名だけではないのだから。


「丸川書店営業課の、横澤だ」

「・・・へぇ?」


彼は、横澤が名を告げると、探るような視線を横澤に這わせた。

また、その中には若干の敵意が見える気がする。


「横澤さん、お待たせしました。って、あれ?三上くん?どうしたの、呼び出し?」

「ちげーよ、忘れ物取りに来ただけ」


三上、と呼ばれた彼は、あるロッカーを開けると、携帯をとりだし、見せつけるようにちらちらふった。


「へぇ?三上くんでも忘れたりするんスね」

「どういう意味だコラ」


あはは、と笑ってごまかす雪名。

たっく、とため息を吐いた彼は雪名を退けて出口へ向かう。


「まぁ、そう言うこった。じゃーな、お疲れさん」

「あっ、はい!お疲れさまっした!」


笑って見送り、着替えだす雪名を後目に、横澤は彼が出ていった扉から目が離せずにいた。


(少し前までの、俺みたいだ)


事柄、関係こそ違えど、そう思い出すと、止まらなくてどうにもモヤモヤした気持ちが抑えきれない。


(あー、くそっ!)


思わず舌打ちしたい衝動にかられたけれど、ふと聞こえた雪名の声にそれを思いとどまる。


「横澤さん?」


口許に無意識に当てていた手をそのままに、顔をあげる。

自分が今どんな顔をしているか、解らずに。


「っ、その顔、反則ッスわ」

「は?、んぅ!?」


口許の手を自然に雪名が退かすと、その唇に自らの唇を合わせた。

触れるだけのそれは、けれど横澤を驚かすには十分だった。


「っにすんだ、雪名!!」


こんな、誰が来るかもわからない場所で、と口にしたかったが、頭が回らず、言葉がでてこない。


「横澤さんがいけないんスよ、そんな顔してるから」

「人のせいにすんな!」

「いや、事実ッスから」

「だいたい、どんな顔してたって言うんだよ!?」


あぁ?と、息巻くと、雪名はそうッスねぇ、と少し悩んでからあっ、と結論を導きだした。


「俺が、離れていなかいか不安で不安で仕方がないって顔ですね」

「なっ」


雪名の言葉に、さっと顔に朱が灯るのが解る。


「あっ、図星ッスね!?安心してください、俺」


横澤さん以外、興味ないですから


そう、耳元で囁かれ尚且つそこに、リップオンを立てて口付けられ、益々顔が火照る。


「さっ、行きましょう?」


そんな状態の横澤を引っ付かんで立たせると、一緒にブックスまりもを出た。


「さて、今日はどこに行きましょうか」


笑いながら手を引く雪名に、横澤はため息を吐くと、「どこでも」と、諦めたように笑った。











また、一つ雪名に堕ちていく音がどこかでした。





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