桐横で十二国パロディ


十二国パロ……しかし、世界を借りているだけで、全く話しに沿ってはいない。


ひらひらと花弁が舞い落ちる中、俺はその花咲く木の根元に置かれた、足の短い長椅子へと腰かけて眠っていた。
10歳を超えてまで蓬莱に居た胎果で、塙麒。蓬莱での名を、横澤隆史と言う。
女仙にも女怪にも見つけられず、そのまま過ごしていたところ、親友の政宗を迎えに来た景麒、律の起こした蝕に巻き込まれ、こっちの世界にやってきた。
その時に、自分が麒麟であることを知った。普通、あちらで10年過ごした麒麟は死んでしまうらしい。でも、俺はそれが無い。大切にされてきたんだと言うことだろう。
俺は、峯山へ律に連れて行かれる前に、俺の国だと言うところを見せてもらった。
そこは、血のにおいが充満していて、人々の叫び声が絶え間なく聞こえてきた。
王を見つければ、その人たちが助かると、国が豊かになると聞いたから、俺は王を見つけることにしたんだ。たぶん、それは麒麟の本能なんだろう。
でも、王は国にも、開かれた昇山者の中にもいなかった。うっすらとする、王気と言われるものは、追えないほどかすかな物。
俺は、途方に暮れた。
それでも、かすかに薫る王気を頼りに国中を捜し歩いた。体中がボロボロになっても……。
それでも、王は見つからない。あれはこちらで王を探し始めて、約6年の月日がたとうとしていた時……俺は、血を吐いて倒れた。
その時、丁度この国…慶に来ていた時だから、良かった。手早い処置と、慶国の宝玉によって俺は回復した。けれど、自国に降りることを禁じられ、一日の大半を寝て過ごすことになってしまった。
唯一来れるのは、この慶ぐらいだ。後は、知らないし、何より動くことを女仙と女怪が良しとはしない。
30歳になるまで後、2年。俺の寿命はそこまで持つかは解らない。でも、それでも待てるだけ待ってみようと思う。

その日も俺は、その木によしかかり、眠っていた……。

桐嶋side

「ん?あんなところで……彼は、麒麟か?」

国事で俺ははるばる、恪ノだと言うのに井坂…国王によって使いに出されていた。
使いの先は慶で、未だ我が国に残る難民についてなど、様々なことを話しに。
井坂が自分で来ればいいのに、と思わないことはないが、あれはあれで一応忙しいのだ。

「あぁ、俺のじゃないですけどね。あちらに居た時からの親友で…」

そこまで言うと、景王高野は口を閉ざした。
何か、言えない事情でもあるのだろう。それぞれの国に、それぞれの国家機密はあるものだ。

「そうか……彼が麒麟だとしても、あんな薄着では今いくら暖かいとは言え風邪をひいてしまうんじゃないか?」

俺の言葉に、高野は苦笑するだけで、何を言うつもりもないみたいだ。
俺は、一応了解をとってからその庭に足を踏み入れ、上着を脱ぐと彼にかけてやる。
彼はピクッと反応したが、起きることなくまどろむこともなく寝ていた。

「景王の前だと言うのに、すまない、こんな恰好で」
「いえ、そんなことはありませんよ。こちらこそ、横澤にありがとうございます。上着はこちらでご用意しましょう」

そう言うと、彼はまた歩きだしてしまったので、俺もその後を追う。
そう言えば、彼はどこの麒麟だと言うのか。王はいるのかどうか。
そんなことが気になったりしたが、所詮は俺にかかわりのない事だと俺はその思考を強制的に頭の中から追い出した。

横澤サイド

俺の体が、ゆっくりと覚醒する。
あぁ、また寝てしまったのかと。
幸せな、夢を見ていたのだと。
王がいて、国が豊かになって、餓えも何もない国。
妖魔に襲われて命を落とすことの無い国。
王の側で笑っていられる、そんな国の夢を見ていた。

俺は、ゆっくりと体を起こすと、自らの体にかけられていた物に気が付く。

「何だ、これ」

どこか懐かしく、それでいて暖かい。手に取ったことで、解った感覚に目を見開く。


―――王、気?


その瞬間、俺は走り出していた。
体の不調など、気にすることもなく、女怪の叫びも指令の言も俺には届か無かった。

王気を追いかける先に思い浮かべるのは、五門のひとつ。
あぁ、まずい、王がまた居なくなってしまう。
そう考えているうちに、ボロボロだったはずの俺の体には力が入り、転変こそしなかったものの、尋常ではない速さで走ることができた。

「それでは、帰路もお気をつけて」
「こちらも、お世話になりました。それでは」

「待ってくれ!!!」

五門の一つに見えた人影に、懇親の力で叫ぶ。
大きな声など、思ったよりも出なかったが、それでも彼は止まってくれた。

「っ!?お前…」
「アンタだ…ゲホッ…ゴホッ…アンタ、しか、いないんだ」

言いたいことはたくさんあったはずなのに、俺はこれしか言えなかった。
もっと、国を救ってくれとか、俺の王になってくれとか、色々あったのに、会ったら全部が吹っ飛んでしまった。
でも……

「…俺には無理だ。他を探せ」

やっと見つけた王なのに、俺は拒絶された。まるで、雷に打たれたかのような衝撃だった。
真っ白になるってこういうこと何だと、始めて知った。
王なのに、俺の、俺だけの王なのに……、そう思うと泣きそうになったけど、俺はそうか、とだけやっと返せた。
何でって思ったけど、聞けなかった。

「ひきとめて、悪かった……これ、返す……ありが、とう…ゴホッ、ゴホゴホゴホッ!!!」
「は?おい!!」

かけられていた上着をやっとのこと、返すと、俺は引き返すように後ろを向いた。
いや、向こうとした。けれど、こみ上げてきた咳と痛みで出来なくなってしまう。
手の平を見ると、自らが吐き出しただろう血で汚れていた。
それを、見た瞬間に意識が遠のく。

「横澤!!」「横澤さん!!」「塙麒!!」

悲痛めいた叫び声が聞こえる中、俺の記憶は途絶えた。






「なぁ、お前はどうして、そうか、と言ったんだ?どうして、縋り付かなかった?お前自身の命がかかっているんだろう?」

あの日、初めて会ったあの木の根元で、再び出会う運命。
彼は、辛そうに寄せられた眉と息でその木に寄りかかっていた。
はぁはぁ、と吐き出される息が彼の辛さを物語っているよう・・・。

「俺は、麒麟だ…民の、国の象徴だ。けど、こんなに弱った麒麟なんて幸先が悪いだろう?それに、俺達の中には、一生王に会えず死んでいく者もいるらしい。だったら、アンタに会えただけで俺は幸せだから」

そう言って幸せそうに笑う彼に、俺は胸を締め付けられる。
そして、どうしてそこまで国を思えるのか不思議に思った。

「国はどうする?」
(お前の、大切な国は・・・俺の捨てた国は・・・)

きっと、命運は俺とこの麒麟の手にかかっているのだろう。
彼が死すれば、また巧国の麒麟が蓬山に実り、育つまでの間、待たなければならない。
せっかく、麒麟がいると言うのに、王を見つけたと言うのにだ。
まぁ、それは俺が悪いんだろうけど・・・。

「俺は、アンタと出会った時点でもう、1〜2年の命だった。せっかく見つけたアンタは、無理だと言う。なら、時代の麒麟に任せた方が早いだろう?自ら命を絶つ真似なんて出来ない。でも俺は、アンタ意外に見つけられなかった。アンタしか、俺の王はいないんだよ」

そう、悲しげに笑う彼は今にも消えてしまいそうで、咄嗟に彼の元に膝を付いた。
そして、消えてしまいそうなその肌に触れる。

「・・・それで、お前は満足か?」

「は?」

「お前の望みは何だ?自分が死んで、他の麒麟が王を選べば満足か?」

どうなんだ、と見つめる。
動揺して、あちらこちらに視線を巡らせようとする彼の顔を捕まえて、俺の目と彼の目を合わせる。
すると、堰を切ったように彼から言葉がボロボロと溢れ出す。

「俺だって嫌だ!!王が、アンタがいるのに何で俺が死ななきゃなんねーんだよ!!俺は・・・死にたくない、けど、死んだほうが、国の、巧の民のためだ!!アンタに、側に侍る事も許してくれないアンタに何がわかる!!?俺にはアンタしかいないのに!!俺はアンタしかいらないのに!!アンタの過去に何があったかなんて知らねぇけど、俺は、俺は・・・アンタに、自分の半身に会えただけで幸せだって思ってなきゃ、拒絶された痛みもごまかせない・・・アンタに、この辛さがわかんのかよ!?」

途中で泣き出してしまう彼の涙を拭う。そして、立ち上がり彼を見下ろす。

「解った。なら、俺がお前を生かしてやる。けどな、約束しろ。俺が道を誤ってお前が失道したときは、真っ先にお前が俺を殺せ。そして、お前は俺と一緒に生きて死ね。次に王を迎える事なんて許さない。俺がお前のただ一人の王だ」

彼は、俺の言葉に目を見開いて固まった。

「ほら、誓約はどうした?」

ククッ、と笑いながら言えば、彼はハッとしたように俺の足元へ頭を垂れた。

「天命をもって主上にお迎えする。これより後、御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと、誓約申し上げる」

「許す」

こうして、巧国の新たな歴史が幕を開けた・・・。





























続きなんてありませんよ。えぇ、だって思い付きですから(キリッ
桐嶋さんが何かひどい男で、横澤さんが見る影もないですが、きっと元気になったら元の暴れ熊に戻る・・・はず。
桐嶋さんにもいろいろあったんですよ。

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