狂い


病んでるかも。














「うぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


昔から年に数度、こうして龍一郎様は何かの不安に陥る。

その原因が何であるかなんてわからない。

医師にはストレス性の発作だと診断が下されていた。

けれど、これでも落ち着いた方だ。酷い時には、月に数回有った事さえある。

もう、こうなってしまえば井坂家の皆は手出しできない。


「あぁ、薫君…龍一郎がまた」


私以外は…。


「えぇ、解りました…、危ないので奥様方は離れへ」

「そうね…毎回、ごめんなさいね。薫君にまかせっきりにしてしまって…」

「いいえ、とんでもございません」


そうして、離れへと奥様と私の両親を見送ると、まだ母屋の中で暴れているだろう龍一郎様の元へ向かう。


ガシャーンと音がするのは、二階の方。

ならば、そこにいるのだろう。足早にそちらへ向かうと、書斎の椅子を持って暴れる龍一郎様の姿が目に入る。


「龍一郎様!!」


ビクッ、と痙攣するように龍一郎様の体が震え、そして止まった。

スウッと上げられた顔。その瞳が俺をとらえると、前置きもなしに涙があふれた。


「か、おる?」

「はい、龍一郎様」

「かおる、かおる、かおる、かおる、かおる…いやぁああああああ!!!!!!!!!」


椅子を投げ出して、抱きついて来た龍一郎様を受け止める。

暴れていたので、肌にいくつもの傷跡が見えるのが痛々しい。


「やだ、やだぁ、いやぁああ、いやぁああああああ!!!すてないで…嫌いにならないで、やだやだぁ、かおる、かおる、かおるっ!!」


今回の原因は私らしい…、何か龍一郎様が不安がることをしただろうか?

龍一郎様の頭を撫で、あやしながら考えるが、さっぱり心当たりがない。

けれど…


「龍一郎様、愛しておりますよ」

「かおる…、かおる…、おれも、あいしてる」


私の言動で一挙一動する龍一郎様を、愛しく思い、子供返りしたような顔で、何度も私にアイシテルと囁く龍一郎様の声を甘美に感じられるくらいは、龍一郎様とは違った意味で、狂っているのでしょうね。


「あぁ、くるおしい我が主さま」

「あはは、へへへっ、かおる、あいしてる…」


私は、私に息もできないくらいの愛を囁くその愛しい唇を、塞いだ。


End


あ、あぁ、何でこうなった?



- 32 -


[*前] | [次#]
ページ:

戻る
main